表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その愛はちょっと重たいかもしれない。(改稿版)  作者: ありま氷炎
第二章 その愛は重すぎるかもしれない
14/15

 再び目を覚ますと、そこは先ほどとは全く別の光景だった。

 しかも口を覆っていた布はなく、手足の拘束も解かれ、薄汚れていた着物も別のものに変わっていた。


「凛様」

「佳梨……?」


 視界に入ってきた顔は、佳梨。青ざめた顔をしていて、心なしかやつれている。


「あなたがどうしてここに?逃げてと言ったのに?!」

「凛様。本当に申し訳ありません。もう大丈夫ですから」

「どういう意味?」

「ここは青家の屋敷でございます。あなたを拘束していた輩はすでに捕らえております。浅はかな私をお許しください。全ての罪は私一人にあります」

「佳梨!」


 扉が急に開かれて銀色というよりも白髪にちかい髪色の女性が入ってきた。その肌は白さを通り越して青白い。


「凛様。私が悪いのです。黎光様、陛下への未練を断つきれずに。桂梨がとんでもない事をしてしまった」


この人が花芳……

触れたら壊れてしまいそうなくらい華奢だ。儚くて綺麗な人。

 

「陛下の元へ使いを出しました。青家が責任を持って、あなた様を王宮へお送りします」


 彼女の言葉が終わる前に、扉が開かれた。


「陛下!」

「黎光!」


 そこにいたのは黎光だった。息を切らせていて、少し遅れて後ろに陽の姿も見える。


「凛!」」


その表情は強張っていたけれど、私を見て破顔した。


「ごめんなさい!」


 咄嗟に私の口から謝罪の言葉が出た。


「どうして君が謝るんだ?無事でよかった!」


 黎光は早足で私が座っている寝台までくると、抱き締める。

 

「話は後だ。王宮へ戻ろう」

「黎光。王宮を出たのは私の意志なのです。彼女たちは角家に利用されただけ。だから、お願いします。罰しないで」


 ここで何も言わないと、花芳と佳梨が罰せられる。

 青族の族長の娘に罪を問うということは、青族全体へ責任を負わせることと同じこと。

 そうなると、族間のバランスが崩れてしまうかもしれない。

 花芳は本来私の立場になっているはずだった。

 王妃。

 それを私が奪ってしまった。

 九年前の出会いで。

 あの時、私は彼を拾わなければよかったの。

 だけど、あのまま一人にしていたら、彼はきっと。

 ううん。

 きっと大丈夫だったかもしれない。

 陽が探しにきてたはず。

 私は邪魔をしたの。


「黎光。お願いします」

「その話は後にしよう。今は王宮に戻るのが先だ。泰芳たいほう、拘束した角家の残党を兵士に引き渡せ」


 黎光は首を横に振った後、振り返って陽の背後に立っていた中年の男にそう命じる。


「かしこまりました。陛下」


 深く頭を下げて、泰芳と呼ばれた人はいなくなった。


「さあ、戻ろう」


 命じる時に見せた顔とは違って、いつもの優しい笑みを浮かべてくれる。

 黎光、だめ。

 このままじゃいけない。

何とかしなきゃ


「黎光」

「凛様。まずは王宮に戻りましょう。翠も帰りをお待ちしております。本当は彼女もこちらに来たかったのですよ」


 翠。 

 そうだ。あの手紙を置いてきてしまって。

 きっと彼女は困っている。

 

「凛」

 

 私を抱く黎光の腕が少し震えている。

 ああ、私はなんてことをしてしまったのだろう。

 浅はかなのは私。

 私が出ることを決めなければ、こんな騒動も起きなかったのに。

 ちゃんと黎光に話すべきだった。

 自分がふさわしくない。お子もきって産めない。だから……。


「黎光。今回の騒動は私が仕組んだ事なのです。角家の残党が私を狙ってる事を知っていましたから」

「凛様!」

「花芳、黙って。私が陛下に話すから」


 私のせいで、揉め事を起こす訳にはいかない。

花芳をこれ以上苦しめたくない。


「佳梨は私の指示で角家に通じた。花芳はこの騒動が起きるまで知らなかったはずです」

「凛……」

「ごめんなさい。黙ってこんな事を計画してしまいました。花芳、桂梨を借りてごめんなさいね」


 花芳が声を上げようとしたけど桂梨がそれを止める。そう、それでいいの。


「凛……。わかったよ。君の言う事を信じる」


 大きなため息が漏れる。

 見上げると黎光が困ったように笑っていた。


「まずは王宮に戻るのが先だ。君の考えは尊重する。いいね?」


真相は多分気づかれてる。だけどそれに気づいていない振りをして頷いた。


「さあ戻ろう」

「黎光⁉︎」


急に体の均衡がずれた視界の高さが変わる。

 彼が私を抱き抱えていた。


「下ろしてください。歩けますから」

「駄目だ。またどこかに行ってしまうかもしれない。嫌だ」


 黎光はそんな力がどこかにあるのかと疑うくらい、軽々と私を抱き上げていた。


「戻る。陽。後は頼む」


私を抱えたまま、黎光は指示をして、歩き出した。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ