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その愛はちょっと重たいかもしれない。(改稿版)  作者: ありま氷炎
第二章 その愛は重すぎるかもしれない
13/15

 目を開けるとうっすらと周りが見える。

 明かりはすこしだけ。

 話し声が耳に入ってきた。


「……様、起きたようです」


 宦官の声がして、それから別の男の影が見えた。そしてもう一つの影。

 声を出そうとして、口を布で塞がれていることに気がつく。


 荀!


 彼女の名前を読んだけど、もごもごとした声が出ただけ。

 なぜここに?

 私を攫ったのは荀?だけど、彼女はただの女官。どうして。

 荀は壮絶な笑みを浮かべ、それから見覚えのない男へ声をかけた。


「この女を使って、何をいたしましょうか?文勇ぶんゆう様。角家、旦那様の恨みを晴らしてやりましょう」


 荀の言葉で状況が理解できた。

 文勇ぶんゆうは旦那様の子。皇帝領から離れた山東国にいると聞いたことがあった。面識はないけど、その名前は知っている。

 荀は角家の使用人だった。

 私を攫ったのは角家。

 きっと恨み。

 角家のその後は聞いたことがなかった。多分調べればわかったのだろうけど、角家のことを思うと旦那様の顔が浮かび、何も知りたくなかった。

 けれども想像ができる。

 きっと角家はお取り潰しになったのだろう。  

 皇帝領にいないとしても、彼は角家の跡取りして生活していたはずだ。だからその影響は多大だったはず。もしかしたら、山東国での居場所をうしなかったかもしれない。

 文勇は旦那様と異なり、権力に固執することはなかった。だからこそ、外国で悠々と暮らしていはずだ。だけど、角家がつぶれ、彼は資金に困った。

 恨みはきっと私に向かっただろう。

 もしかして荀が何か話したかもしれない。


「殺すのは惜しいな。これほど綺麗な女は他にはいない。さすが、あの後宮でたった一年で四妃に上り詰めただけはある」

「それでは薬漬けにして、あなたの玩具に仕立てましょう」

「恐ろしいことをいうな。荀。お前がそんなことを口にするとは」

「養女にして教育し、恩義があるはずの旦那様を死に追いやり、角家を破滅させた報いはむけてもらいたいものです」


 荀の笑みはとても気持ち悪くて、吐きそうになる。

 確かに裕福な暮らしはさせてもらった。

 けれども、私は幸せじゃなかった。

 挙句に旦那様は私を手篭めにするつもりで。

 そのことを思い出して、気がついたら震えていた。


「凛様。恐ろしいですか?そんな怖い思いはあっという間になくなりますよ。ご安心ください」


 荀の唇の両端が上がり、その目は蛇のように冷たかった。


「早く移動しましょう。嗅ぎつけられます。この女をどうするかは後で考えるとして、移動しなければ」

「そうだな」


 宦官が少し焦ったように言って、文勇がうなづく。


「凛様。しばらくのまたお休みください」


 荀が近づいてきて、私は逃げ出したかった。けれども手足は縛られている。その上、宦官が私を抑えた。口を塞ぐ布を取られたと思ったら、すぐに薬に匂いがした。


「ああ、この布に別の薬も仕込ませておけばよかったですね」

「荀。薬の配分を間違うと死ぬぞ。今は殺す時じゃない」

「そうでした」


 宦官の言葉、荀の残念そうな声を最後に、私は再び意識を失った。




 

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