7話 令嬢さまと戦闘メイドのラストショッピング
屋敷を出た二人は王都に来ていた。
貴族学園に通い、模範として親しまれていたアンバー・ブレッドスターの姿はもうない。冒険者用の店で目をキラキラさせながら保存食を眺めているのは、もうただの怪力なおでぶガールだ。
「モモ、わたくし気づかなかったけれど干し肉って美味しそうね。旅のお供って感じもするし!」
「お嬢さま、おでぶキャラが板につきすぎです」
「これ、いっぱいくださいな」
「さすがお嬢さま、金だけはありますもんね!」
うるさいメイドのことは気にしないでおく。
アンは店の主人がえっほえっほと干し肉を袋に詰めている間、店の中をきょろきょろ見渡していた。
店で剣や槍を眺めて財布と相談しているのは、冒険者と呼ばれる職業の主に男たちで、それぞれ簡易な服装に武器を腰から下げている。中にはステッキを持った魔法職の者もいるようだ。その中でふんわりとしたワンピースを着た少女とメイド服の少女は、異質な存在感を放っている。
ジロジロと大柄な男に見られ、アンは「なんですの」と小さくつぶやいた。
「やっぱりわたくし、噂になってるのかしら……アンバー・ブレッドスター、婚約破棄されたってよって」
「噂になってたとしても、今のお嬢さまを見ても誰も気づきませんよ。鏡出しますか?」
「あなた一々傷つけないと買い物もできないのかしら」
呆れたアンに、モモは「んなことないです」とふんぞり帰った。
「私も本業はお嬢さまの護衛ですので、いろいろと旅の準備を整えました。購入した武器やら暗器やらは口の中に突っ込みましたから」
「……さすがね、トンデモメイドロボめ」
「ふふ、お嬢さまったら口がうまいんだから」
アンはお店の人から受け取った、ほとんど中身が食べ物な袋を手渡した。それもモモは謎技術ですっぽり自分の中にしまい込む。これで準備はオーケーだ。
お店を出たモモは、「お嬢さま、グレートな提案があります」と囁く。
「どうせ最後です。最後にパーッと遊んでいきましょう」
モモの指さす先には――まだ日が昇っているのいうのに、にぎやかな声が外まで聞こえてくる大衆酒場。
「たおやかな令嬢だった頃はできなかった遊び、最後にしちゃいません?」
「モモ、あなたって悪い子ね」
おでぶなまなざしが、きらりと輝いた。
「乗り込みましょう、暴れましょう! 今のわたくしは、やけっぱちのアンバーよ!」
「さすがですお嬢さま」
モモは球体みたいな主人が、弾むみたいに酒場に歩いていくのを眺めて「……よし」と呟いた。
「王都を離れる前に調査しておくか。お嬢さまをはめたのはどこのどいつだ」
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