15話 暗黒騎士さま、うざい。
ギルドに持ち帰ったレインボードラゴンのウロコ、お肉、その他モロモロ……。ドヤ顔をするアンを、顎が外れそうなほどな形相で驚いて全員が見つめていた。
「いや、たぶん暗黒騎士がやったんだろ」
「…………わりぃが俺は何一つ手出ししてねぇぞ。全部あの女がやりやがった」
神妙な口調が、マジであることを物語っていた。全員ドン引き。アンだけがけろっとしている。
「モモ……もしかして、この程度でドヤるなって意味でみんな引いてるのかしら」
「お嬢様が自重しない最強武人だからですよ。残念でしたぁ」
「え、わたくし、なんかやっちゃいましたの!?」
「…………認めねぇぞ」
茶番にキャッキャウフフしている二人の会話を、ナズマが遮った。その隻眼は、怒りに燃えているーー
「噂聞いてみりゃデブだわ、噂以上の化物だわ……なんなんだよお前は……!」
理不尽。
これにはアンも怒る!
「あなたねえ! 勝手に見に来て、勝手にキレるなんておかしいわよ!」
正論!
「あなたただでさえ超人相悪いんだから、性格ぐらい素直でいたらどうなのよ!」
訂正、アンも理不尽だった。
モモはどうしたものかとため息をつく。うーん、この男、全部の元凶って言ってもいいし正直面倒くさいことしかしないし言わないし、このままお嬢様がキレてぶっ殺してくれてもいいんだけれども。悩んでいる間にどんどん話が進んでいく。
「お前みたいな化物……絶対結婚できねえよ! バーカ!」
「何よ貴方、わたくしだって、わたくしより強い武人にしか興味なくてよ」
言い返したアンの肩を、ナズマが強く掴んだ。一瞬身体を揺らし、アンはその表情を見上げるーー蔑むような、笑みを。
「なら、俺を倒してみろ。アン」
「望むところよ……もしわたくしより強かったら、お婿候補にしてあげるわ!」
バチバチ火花を散らす二人。モモはつぶやいた。
「いやマジですか」