11話 二人で一つだったから、地元でもどこでも負け知らずです
アンにとって、婚活とは、
婚約破棄された瞬間に、より自分より強い者を探すこと、という意味になった。
「……ふうっ、女二人だからって舐めたら痛い目に合いますよ」
「ああ、またわたくし、力が……」
ガラの悪そうな男たちが、倒れて積み重なって山のようになっているのを、二人で眺める。
「おとなしく、村の人たちに盗んだものを返しなさい。外道盗賊め」
「わたくし、これ以上あなた方を傷つけたくないんです!」
盗賊の頭らしき男の両手をアンは握った。
バキバキバキバキ! とすごい音がした。
「ぎゃああああああああ! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、返しますから、命だけは」
「わかってくれたならいいのです」
ふっくらとした頬に笑みを浮かべる。
男は、泣きながらコクコクとすごい勢いで頷いた。
旅に出て二日目。
2人がいわゆる、悪いやつらをぶちのめしたのはこれで五回目である。
☆ ☆ ☆
たびに出でまだ数日も立っていないのだが、アンとモモ、女ふたりの旅であるからかーー当然のように、いわゆる悪い奴らに絡まれることが多々あった。
たとえば盗賊の輩にしてもこれでアンたちに絡んでくるのはもう四回目で、そのたびに
①絡まれる
②オーバーキルする
③ついでに組織ごと壊滅させる
というループを続けていたので、知らない間に街の人や村人からすごい感謝と待遇を受ける始末。
壊滅させた盗賊団が悪事を働いていたという被害者村で、アンとモモはお世話になっていた。
「本当になんとお礼申し上げていいのやら……女神様やぁ、」
「大切なわたしたちの食べ物や金類を取り返してくれてありがとうございます……」
「息子にまた会えた……………アン様とモモ様のおかげで、」
もはや聖母に拝むかって勢いの村人たちに、アンはたじたじする。
「いえ、わたくしたちは目の前にはびこる悪を掃除しただけですわ……! でも、みなさまが救われたなら良かった」
「お嬢さま、パワーが炸裂してましたもんね、大の男何十人にも向かって」
「お腹からガトリングぶっぱなしてたモモに言われたくないわ」
嘆息すると、毒舌なメイドはフフと微笑んだ。
「よかったら今日は泊まっていってください、ごちそうを用意しますので」
村長の言葉にアンの目がきらりと光る。
「ごちそう! ごちそうですって! モモ!」
「お嬢さま、デブキャラが板につきすぎです」
「いいじゃないの、いただきましょうっ!」
るんるんで村人たちと談笑し始めたアンに、モモは「……まあ、いいか」と聞こえないようにつぶやいた。
(なんだかんだ……貴族界で猫かぶってた頃より楽しそうな気がする……お嬢さま)
それが、たとえ目的地であるユズハの最強ギルドにて『最近、でぶ怪力のお嬢さまとイカれたメイドロボの二人組がヤバイ』という噂で持ちきりであってもだ。
二人がたどり着くまで、あと数日。
すみません少し投稿遅れました
( ;ᵕ; )




