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メフェナピロアとベルトマモペン

宇宙とは広大である。


 曰く、宇宙が誕生したとされる超新星爆発(ビックバン)は、今もその勢いを止めることなく広がり続け、その広大さはたとえ不死であっても探索するに飽きない程だろう。もしくは途中で考えるのをやめる。

 そんな広い宇宙の一角、数多(あまた)の星々が集っては、互いの有益物資や情報や技術等を取引し、さらなる星と宇宙と生物の発展を続けるコミュニティ。


 それこそが大宇宙星間連合、通称ミフェナピロアである。(異星語で蜂の巣を意味する言葉らしい)

 メペロピルタさんは、そのミフェナピロアを統べるトップクラスの人物であり、即ちそこのピロピロ。(異星語で女王を意味する言葉らしい)

これまで多くの星々や宇宙間、あらゆる銀河系を、持ち前の器量とセンス、それと相棒機であるユーキューチャイチャイ(これは特に意味などなく、商品名らしい)で自ら渡っては、様々交渉を持ちかけて宇宙全体を発展させた偉大な開拓者が一人である。


 頭が悪いカタカナが羅列されてイマイチ情報が伝わってこないが、要は宇宙のヤベー奴がココ地球に来て、今マスターを地球の代表者か何かと勘違いしたまま話が進んでいる。


 場面は転じてここはなんの変哲もない喫茶店の片隅。

エクソ寿司本店は絶賛営業中なので連れて置ける場所もなく、人目をはばかるようにしてコーヒー片手にお話を伺っている。ちなみにコーヒー頼んだだけでパンが付いてくる。


「ミフェナピロアはこうしている今も発展を続けてるミ、地球の資源は宇宙全体で見ても実に多く、我としてはどうにか引き入れたいと考えとるんやけどミ……、」

「けど?」

「どーゆーこっちゃようわからんミが、ミフェナピロア内は地球の評判が異常なほどに悪いミ。単なる風評被害っちゅーか、妙な噂のレベルではあるんやケド、この星には星賊含め誰も近づこうとせえへんミ。今回はその実態の調査も兼ねて訪れたワケやミ。」


 この星、宇宙間でそんな心霊スポットかバミューダトライアングルみたいになってんのか。

悪い評判が祟るが良い物資等が多くある、まるで魔獣の潜む宝島だ。

 誰も行こうとしないのなら、自らでこの地球に単身赴いたものの、あえなくこの辺境で墜落と……。

 なるほど、磁気だか重力だか酸素濃度だかなんの要因かはアタシにはよく分かりませんが、それ程の凄腕パイロットが墜落するとは、どうにも地球とは相性そのものが悪いらしい。


「はぁ、これで今月三度目ミ、保険下りるんかなぁ。」


そうでもねえみたいだ。たぶん保険はでません。


「しかしそうなるとどうだ、この星自体はミフェナピロアのピロピロから見てどう映る?」

「噂に違わぬ(ペリル)の山ミ。豊かな森林(ベルサ)、多くの(グゴン)、あたたかな太陽(ピピユレ)(モュ)、何より広い(パツー)……、これを前に手を伸ばさず下がるのは、開拓者(モフェスタ)として恥ずべきことやミ」


変な単語いっぱい出てきた。助けて。

一個発音できませんし、もゆ!


「ただ問題があるとすれば、それはこの星の原住民同士が未だ抗争を続けてる状態にあるっちゅーことやミ、ジブンどうにかできへんのかミ?これでは交渉もクソもあらへんミ」

「あいにくだが、それをどうにかするのが私の目標であり、夢であり願いなのでな、私だってどうにかしたいさ」

「せやろなー。何を競い合うモンがあるっちゅーミ、皆二足歩行で骨肉皮の構成で、臓器の造りも手足の数も等しく同じやのミ、生物としての完成度も十分高いモンやのミ、惜しいなあ、どーりで古い文献には、地球ヤベーって書いてあるワケミ」


 人々のシアワセ、それこそが切望する我らの悲願であり、地球人類永劫の課題でもある。


 なんとまあ宇宙は広い、その星の全てがシアワセなのは最早当たり前で、その上で他の星との交流を進めている。

我々地球人類共は何故、地球生物の頂点に立ちながら、その上で手を握りしめて殴り合うのだろう。

その手を開いて互いに繋ぐという単純なことが、何故出来ないのか、宇宙規模で見ればどれほど小さな喧嘩をこの小さな惑星で続けるつもりなのだろう。

 成る程、道理で宇宙人がこの星に一瞬しか現れないワケだ。


「まー、それもしゃーなしミ。どのみち我のユーキューチャイチャイを直さんことには現状何もできそうにあらへんミ」

「そうだな、その件に関しては我々も手伝おう、ヘタに騒ぎを起こすと厄介だろうしな」

「あら、そりゃおおきミ。まー、これほど資源が多ければ割と何でも代用出来るはずミ」


 宇宙の技術開発はかなり発達しており、その星で採れる石や木などの物質を変異させ、宇宙船のボディやケーブルの代用をすることも、そう珍しくはないらしい。

何日続くかも分からない探索や、その星によって適した材料を得られないまま、故障したりしたら詰みかねないので、こういった実用的な技術や科学が進歩しているのだ。

ご都合宇宙パワー便利ですね。


「木や石でもいいんでしたら、山の中なんて資源が特に多いんじゃないスか?」

「うーん、変質させるもんにもよるんやけど、大体千倍の質量が必要となるミ、一グラムの宇宙鉄板作るんに一キロの資源。破損箇所も多いから山で言えばだいぶ削ってまうミ」


げげ。ご都合宇宙パワーのくせに条件厳しめ。

 まあいかんせん物質の変更だ、遺骨からダイヤモンド作るみたいな話を聞いたことがあるけど、あれも人一人分の骨使って、出来上がったのはゴマ粒程度の大きさだったハズ。

ちなみにこの物質変更技術を、異星語ではベルトマモペンと言うそうです。今後一切出ないので覚えなくていいです。


「そうなると石や木なんかをあまり用いすぎると、世間的にバレちゃいますね、如何しましょうマスター?」

「うーんそうだな、そうなるとこう、消費しても誰も困らないというか……、むしろ誰かを困らせてるゴミ……みたいな?」

「いやいや、ゴミ処理場から勝手に持ち出したらそれこそ問題でしょう、そんなゴミだか廃材みたいなの集めてる人なんて……」


いた。


 アタシとマスターはほぼ同時にその人物を思い浮かべると、互いに見つめあってハイタッチをした。

よし、よし! さすが仲間が増えてきただけある、今回は解決も早そうだ!宇宙がなんぼのもんじゃい!


「オーケーだメペロピルタ嬢、資源材料の調達はどうにかなりそうだ!修理キットみたいなのは?」

「抜かりないミ、足りない分はこの星のリペアツールで代用してどうにかするミ」


 よーし、この調子ならトントン拍子で宇宙に送り返して、のんびりお酒呑んでこの章は終了だ。頼みますよ頼みますよ〜。

 そうして高まる鼓動と引き上がる口角のまま、アタシは端末を開くと、すぐさまカシャニャンにLINEを飛ばした。


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