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14回目の異世界転送 そのログ  作者: 代筆クリスタル
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「頭、まずい。兵だ。」


上から声がした。


 直前まで男子中学生のような

取っ組み合いをしていた

レグやその他の人達が、

体勢を整え、

一瞬にして部屋の隅、

ソファの下、バーカウンターの

後ろに身を隠す。


無音になった。


 もしいきなり、ここに誰かが

入ってきても、オレが一人

ぽつんと立っているだけに

見えるだろう。

凄いなこの人達。


「数は」


「2、3、……5」


「警備兵じゃねえな」


「私兵か。チッ。

ここがバレてる」


 レグが音もなく

オレの隣に忍び寄った。


「わりい、アルマ。変更だ。

このままここにいたんじゃ

あいつらに捕まる」


 左胸にあるポケットから

緑色の石を取り出した。


「持ってろ。失くすなよ」


「え、あ、これ……は?」


にや、と悪戯っぽい

笑顔で返された。


 その顔があまりにも

純粋というか、素直というか、

くっ……!

ヤンキーは苦手なのに……

ちょっとドキリとした。


 ぶっきらぼうなのに、

ふとした時に

子供っぽい。

そのギャップに

心の距離感が縮まる。


ていうか憧れる……!


 これ女の人は弱いだろう!

ちょっとワルい感じなのに

実は人情家で、

誰よりも優しいとか。


あーもー

いいなー。


 そんなんなりたかったなー。

カッコ可愛いイケメン。


……今回の世界、

イケメン多くない?

しかもオレが好きな……

いや憧れる理想の

イケメンたちが。


レグは、すう、と息を肺にためて




「準備はいいかてめーら!」




 と、さっきまでの隠密モードは

どこへやら、大声で激を飛ばす。


「狙いは悪徳商会ゾッセルの金庫!


それ以外は一切なしだ!


誰も殺すな!


何も盗むな!


女は泣かすな!」





「義盗賊ディオン、開店だ!」





おおおおおおおおおおおお!


という雄たけびが響く。



 思わずオレも一緒に叫ぶところだった。

一体感をオレにも…………!


「探索」(サーチ)で外を見ると、

兵士がこちらに気づいたのが解った。



「よっと」



 レグの声がしたかと思うと、

視界が天井へ向かった。



「わ!?」



 その左前方には切れ長一重瞼の

レグの顔が目の前に迫る。


 少し照れくさいのか、

無理やり眉間にシワをこめている

ように見えた。

オレの肩と両足を抱え込み、

俗に言う、




「お姫様だっこ」で




 バーの2階までひとっ跳びした。

そのまま窓から飛び出し、

屋根を伝って走っていく。


 暗闇から突然の

太陽光にさらされ、

目がくらんだ。


 思わず目を背けると、

オレとレグの影が

高速で流れる地面に

映るのが見えた。


 影は屋根から屋根へと

移っていく。


 そのまま、その、

お姫様抱っこされるオレ。


 歩道を歩く人たちには

怪盗がお姫様を攫っている

ように見えるだろうか。




うう……

恥ずかしい。




「ビビったか?」


「あ…………まあ……」


 お姫様抱っこされながら

屋根をぴょんぴょんなんて

経験、滅多にないだろうし。


「錬金術で作った石だ。

作ったのは俺じゃねえけど。

ダチがいてよ」


錬金術。誰かさんを思い出す。


「こいつを身に着けてると

体がすげー軽くなる。

見てみろよ?地面ひと蹴りで

こんなに進むんだぜ!?」


はははっと無邪気に笑う。


「す、すごいデスネ」


「だろだろ?」


「魔人化」(エビルモード)なら

一歩100メートル以上

行けるけど、まあ反則だしね。


「そーゆーわけで、わりーけど

最後まで付き合ってもらうわ」


「はい!?」


「この石、持ち主に

ぴったりくっついてたら

そいつも力を借りれるんだよ」


「え、いや、じゃあ、

れ、レグ……さんが

持って、オレ…………私を

運んでくれたら、いいんじゃ……」


 オレのたどたどしい問いに、

ほとんど間を置かず

レグは答えた。


「万が一、なんかあったら

石を持ってる方が生き残れる」


「アルマは生きとけよ」



な ん だ こ の 

ワ イ ル ド 

イ ケ メ ン……!



「アジトがバレてた。

入口でギャーギャー

やらかしたのでバレたんだろな。

顔もバッチリ見られてる。

当然、アルマも狙われちまう」


「あの……

誰に狙われるんでしょうか」


眉間にいっそうシワを寄せ、

真っすぐ射抜いた目は

誰かを見ていた。


「…………――クソだ」



くぅ……わからん!


 ただ、まあ、義盗賊とか

悪徳商会とか言ってたし、

多分これは世直し的な

盗みって事でいいんだよね?


 周りを見ると、義盗賊のメンバーも

ぴょんぴょん屋根を跳んでいる。




 そのうちの一人の、

異世界人に目を配る。

あの人とどうやって

話したらいいのか。


 いつも思うけど、色々と最強の力を

持ってても、問題解決に役立つことが

本当に少ない。

だいたい人間関係が上手くいかずに

事がなかなか運ばない。



…………――実は、最強のチート能力って、

コミュニケーション能力なんじゃないの?



そういや……

コミュニケーション能力系の

チート能力を持つ主人公って

小説でほとんど読んだ事ないや。


……神様でも

持ってない能力なんだね。



●●●●●●●●●●


時間を「探索」(サーチ)

現在、午後12時20分。


リミットまであと約4時間30分。



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