表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14回目の異世界転送 そのログ  作者: 代筆クリスタル
17/40

17

とりあえず「探索」(サーチ)を使った。


ここは城下町の南東、

入り組んだ路地の一角。


 この部屋にいる人間は全部で8人。

部屋の形状はいくつかの棚、壊れかけのタル、

バーのようなカウンターが奥にあり、

ソファのようなものが所々ある。


元々がバーなのかな。


 混乱はするものの、正直、

こういう展開は慣れている。

というか落ち着いてきた。


 美少女になる呪いを食らってから

誘拐される事は珍しくない。

この程度はもう体験済みだ。


 しかしこのメガネがなければ

落ち着くことも出来なかったろう。

リーフ!サンクス!


 まあそれはいい。

そんな事はどうでもいい。

問題は……



「おいおい。

そんなブルッてなくて

いいって。なにもしねーし」


 赤髪で切れ長の目の男性は

部屋の隅に背中を預け、

ふてぶてしく腕を組んでいる。


「なにもできないだけじゃろ」

「女に一番ブルッてんのはレグだろが」

「ガキ」

「ああ!?ドン坊に

言われたくねえんだよ!」


……………………

ああ……………………

……………………………………


「いつまでもお子様ねえ。

んもう、いっそ、アタシで卒業しとかない?」

「男だろおめぇは……!」

「気持ち悪い話すんな!酒がまずい!」

「てめ!なに酒飲んでるんだよ!

これから仕事だぞ!」


……………………………………

…………………………………………

…………………………………………あああ…………


「ね、大丈夫?」


小柄な男性がオレを心配する。


「ごめんね。ちょっとの間ここに

いてもらいたいんだ。

大丈夫。何もしない。それは誓う。

だから安心していいよ。

……って言っても無理かな?」


あははと笑う、一見女性にも見える

この男性はオレを気遣ってくれた。


違うんだ。

違うんだよ。


 何か、こう、荒くれっぽい男の集団。

誰かが毒づいて、誰かが笑い、

誰かが力説している横で、誰かが

どうでもいい話をする……




こんな…………





こんな仲間に………………





なりたかった…………………………



 憧れが、オレの目の前にあった。

イケメンになりたかったオレが

こういう集団に憧れないはずが

なかった。


ああ、いいなあ。

こういうの。

いいなあ……

憧れるなあ…………


今の自分の姿を

思い返す。


 金髪、碧眼、巨乳……

細い腰、ぷりんとしたお尻

細く長い脚……

性格も、元々大人しい。

ついでに赤いフレームの

きゅんきゅんメガネまで

プラスされたその姿は


 憧れの男の世界から

あまりに、遠すぎた……



思わず涙がこぼれた。



 この人達に加わって、自分も

肉を齧りながら、

酒を飲みながら、

歌を歌っているような

想像をしてしまい、

さらに涙が止まらなかった。



そんな事で泣いてしまう自分が

辛くて涙がとめどなかった。



「ぽんっ」



 誰かの声に

思わず正面を見る。




花。




青い花が目の前にあった。


 赤い髪の男性が照れくさそうに

差し出してきた。


「な、泣くなよっ」


 キョトンとしていると、

周りから大爆笑が起きる。


「うわー」

「あんなことやるヤツ

ホントにいるんだ」

「レグ、アタシ嫌いじゃない」

「だっせー」

「ぶははは!」


「ううううるっせええ!」


 オレの手を握り、涙にぬれた手を

自分の袖でふき取り、青い花を

手のひらに置いた。


「あ、あのよ。

ホントに何もしねーから。

すぐに解放すっから。

……んで」


「俺、レグ」


「……あ、アルマ、です」


「レグだけじゃわかんねえだろ」

「説明下手くそ」

「ホントにガキだな」


「…………!!!

………………あーくそ。

……………………しかたねえ」


「悪かったよ。アンタを利用した。

ドン坊の通行証がねえから、

一芝居打ったんだ」


 ソファに突っ伏しながら

ひらひらと右手を振る子供。


「いや、時間がなくてよ。

手違いで通行証が

手に入らなくて……

途方に暮れてたところ、

アンタが門の外に見えて……」


「貴族の娘か何かかなって。

でもよく見たらあんまり

品がねえから、商売女かなって」


ツボが奥から飛んできた。


小柄な男性がニコニコしながら

ツボをもう一つ抱えている。


「い、いや、ちがっ。わりい。

と、とにかく、アンタは中に

入りたそうだったから、

利用できるかもしれねーって。

俺は俺で焦っちまってたからよ」


一息つくと、まっすぐオレを見て

言い放つ。



「俺たちは、義盗賊ディオンだ」



義盗賊?



「その頭が、ま、俺」


「頼りねえ、が抜けてんぞ」

「頭の悪い、も」

「何もできない、もなー」


「よーしてめーらもうダメだ。

泣かす!」


喧嘩が始まった。


うーん……


何て…………


何て憧れる

「男の」集団なんだろうか。

ホントに仲間に

加えてもらいたい。


あ、ところで。

問題って言ったけど


オレがこの集団に

憧れてるとか

それでへこんでるとか

そんなんじゃなくて。



この集団の中に、

1人、

異世界人が

いるってところ。



●●●●●●●●●●


時間を「探索」(サーチ)

現在、午前11時55分。


リミットまであと約5時間。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ