表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14回目の異世界転送 そのログ  作者: 代筆クリスタル
15/40

15

朝。


 オレは日の光が届かない奥の部屋にいたが、

「探索」(サーチ)で今が朝であることを

確認できた。どこからだろうか。

ハーブのような香りがする。


「魔女様。おはようございます」


 仕切り布の奥から、リーフの

シルエットが膝をついていた。

慌ててメガネを探す。


「うん。おはよう」


 人の視線が気にならない代わりに

他人の顔がモザイク処理される

メガネを掛け、挨拶をした。


「それでは、失礼致します」


 そう言うと、仕切り布を開き、

モザイク越しでも解る優しい目をした

さわやかイケメンが、オレの服と

下着を持って入ってきた。


 今のオレは薄い布しか身にまとって

ない事を思い出す。固まるオレに対して

リーフは優しく、体にある薄い布を

取り払い、オレを完全な

すっぽんぽんにした。


 素っ裸のオレを立たせ、

足を上げさせ下着を通し、

滞りなくブラジャーを着け、

タートルネックワンピースを

素早く着せる。


 簡素な椅子に座らされ、金髪を

優しく、優しく、何度も櫛ですいた。


「朝食の用意が出来ております」


仕切り布の向こうには、別世界が広がっていた。


 焼きたてのパンとその上にポーチドエッグ。

うねるマッシュポテト。

色とりどりの野菜とミニトマトには

黄色いドレッシングがかかっている。

隣にある黄金色のスープからは

湯気が漂っている。


 トドメに、何種類も調合したであろう

ハーブが耐熱ガラスの中で踊り、

そのエキスを抽出したものが目の前の

カップに注がれている。


「召しあがってください魔女様」


朝日でリーフは神々しく輝いていた。




もう好きにしてくれ…




 オレと同じ異世界人、ディーガンの洗脳を

解いたは良いものの、何を言っても

生返事しか返ってこない。


 今の状態じゃ話は出来ないな。

まだ聞きたい事はあったのに。

しばらくしたらまた尋ねる事にしよう。

ディーガンの能力が

「星の問題」に近い気がする。


 リーフから最高のおもてなしを

受けた後、オレはこの街、エンティオを

散策していた。

 「探索」(サーチ)で見た通り、

中東っぽい。


 なのに、エルフやドワーフ、

あとは頭に角がある鬼のような

種族まで歩いている姿は何だかシュールだ。


 見たことがある野菜や果物、

全く見たことが無い妙な器具、

クティオ語で

書かれたラベルのビン。

これらを見ているうちに

ちょっとした観光気分になった。

こんなにゆったり

街を見るなんて久しぶりだ。


 相変わらず、まわりの人間や

亜人種はオレを物珍しい目で

見まくってくるが、

その視線は気にならない。


 メガネ様様だ。

そのメガネを作ってくれた

リーフ様様なんだけど。


 リーフは今日も一日中

オレに付いてくると

聞かなかったが

リーフの家に帰る門限を

設けることでしぶしぶ納得した。



何かもうオレ、

リーフの娘みたいになってない?



 リーフも仕事があるので、

オレに付いてる暇はないだろうに。

常に忙しそうに何かしてたし。


 さて、この街を改めて

「探索」(サーチ)したところ

2、3日前にエンティオ南東に隕石が

衝突したという話で

持ちきりになっていた。


 そのクレーターの中心には

特殊な鉱石があるとか、

未知の生物がいるとか、

何もなかったとか。

様々だ。


 ん?あ、それ、原因は

多分オレだな。

大気圏突入した跡だ。


 問題はここからだ。

このクレーターの調査に、

魔女様が来られると言っていた。


 異世界人のスキルを把握し、

こことは別の世界があるという事実を

受け入れているであろう魔女様。

そういった人たちにとって

オレは邪魔以外の何者でもない。


 強力無比な力を持ち、

自分たちの意のままにならない上に

魔女サイドが掌握している

ディーガンの洗脳まで解いてしまった以上、

敵対は免れない。

まあ、まず間違いなく戦闘になる。


ラスボスは大概そんなヤツなんだけどね。


 いきなりラスボス登場ってわけでは

ないだろうけど、魔女様を確認しておきたい。

んー。でも。ディーガンが復活するまでに

済ませたい用事もあるんだよなあ。

どうするか。


 いっそ魔女様に「探索」(サーチ)

かけたらどうだろうか。

全て解決しそうなものだけど。


うーーーーーん…

…―――

――


 賭けになるけど、魔女様は後回しだ。

どうせ会ったって戦闘になるだけ。

今はもう一人の異世界人に

コンタクトを取る。


エンティオからかなり離れ


「魔人化」(エビルモード)

「魔王技巧」(マスタースキル)を発動。


「探索」(サーチ)で見た

異世界人はこの世界に3人。

1人はここ、エンティオにいる

ディーガン。

もう1人はここから

北西320キロにいる。あの人。


 最後は…これは最後だ。

うん。明らかにめんどくさそう。

まずはこっち。


 ヒールで地面を蹴る。

一歩で10メートル以上進む。

二歩で30メートル。

三歩で90メートル。


 自分の半径数メートルだけ

圧力をかけ空気がなるべく

振動しないようにする。

この状態で走ると、風を切る音やら

地面を蹴る爆音やらで目立ちすぎる。


魔女様がいつ来るかわからないから

なるべく静かにしておきたい。


そして、「探索」(サーチ)

時間を測る。今は午前10時。


今回は早めに事を

進める必要がある。

出来るか?解らない。

だがやるしかない。


リーフの門限、

午後5時までに

戻らなければ!


ヒールの音を響かせて、

城下町へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ