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14回目の異世界転送 そのログ  作者: 代筆クリスタル
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「魔女様、一体どういうことでしょうか」


ディーガンの声が緊張していた。


 「黒龍を討伐するにあたり、その戦闘で

私の力量を図って頂けるのでは

ないのでしょうか?」


 え。いや。うーん。でも。黒龍と戦っても

全滅するんだけど…とは、言えず。

どう言っていいのかわからず沈黙する。


「畏れながら魔女様」


駕籠のすぐ傍からリーフの声がした。


「私が魔女様の意向をに言葉に致します」


え、ちょ、待…


 「ディーガン。

黒龍は魔女様が退けた。それはなぜか。

それは黒龍に頼らずとも魔女様ご自身が

ディーガンの力を見極めんがためだ。」


リーーーーーーーーーーフ!


「…魔女様と、戦えと?」


 「戦いではない。力を見る。

本当に戦いになったならば、

ディーガンとはいえ

無事には済むはずがない」



「…」



 静寂が包んだ。おいリーフお前。

何てこと言ってくれてるんだ。

全くオレの意向が伝わってないんだけど。


ディーガンが、一呼吸置いて、静かに話す。


「では…私の力量をとくとご覧ください」


空気が変わる。


 「探索」(サーチ)で見る

ディーガンの体の周りはゆらゆらと

熱気が舞っているように

空気が歪んでいる。


 「魔女様、私は下に降ります。

何人たりとも上には通しません。

それと…―――…ディーガンの事、

宜しくお願い申し上げます」


 少しためらいがちに言うと、

駕籠の外で頭を下げ、山を降っていく。

足音が遠くなり、聞こえなくなった。

場には二人が取り残された。


「・・・・もう始まっていますか?」


「ちょ!ま!」


 何でこう異世界人は好戦的なんだ。

でも、手間が省けた。ようやく会話ができる。

慌てて駕籠から出る。


「…!!!」


 ディーガンの表情が引きつる。

耳までかかる黒髪。薄茶色い目。

キリリとした眉毛に

眠そうな二重瞼。

通った鼻筋の下には

薄い唇が、への字に歪んでいた。


こいつもイケメンかよ…


 その視線に自分の顔が

ゆっくりと紅潮し、背中にじっとり汗をかき、

心臓がドキドキし始めたのが解った。


「…えと」


 オレの一言に反応し、ディーガンは

高速で後ろへ下がった。

ディーガンがいた大地には代わりに

変な剣が刺さっていた。


「本気、なんですね」


 ディーガンの周囲がさらに歪んだ。

何で会話させてくれないんだ。

もう。いつもこう、何で…


 あ。オレ、今、

「魔人化」(エビルモード)だった。


 目が赤く光り銀髪がゆらゆら

動く今のオレの姿は、

必殺の気を纏っているように

見えるだろう。


「ちょっ…」


 思わず、違うんだよ!と右手を

ディーガンへ向けたその時、


 ディーガンが視界から消えた。

オレの斜め後ろに飛んでいた。

またも、元いた場所には

剣が刺さっている。


 迷わず振り返り視線を送ると

ディーガンは驚愕の表情を

浮かべた。そうか。

完全に死角を取ったと思ったのか。


ごめん。「探索」(サーチ)で丸わかり。


 ディーガンは意を決したのか、

目の鋭さが増した。

四方八方、ディーガンが

高速で飛び回る。


 ディーガンがいた場所には、

やはり剣が刺さっており、

どんどんその数が増えていった。

どんな能力なんだろ?


 完全なる死角から、ディーガンは

剣を振り下ろす。剣は、

オレに触れた瞬間に砕け散った。


「結界…!」


 いや違うよ。

「魔人化」(エビルモード)

自身を強化する。

しかしそれ以外の効果もある。

オレに触れるものを弱体化する能力だ。


 盗賊の砦で襲ってきたゴロツキ親分の

斧が砕け散ったのは、オレ自身の硬度と

弱体化により鉄の結合が甘くなり、

結果、ちょっとした衝撃でも

砕けるように急速に劣化したのだ。


 ディーガンの剣も、同じ運命を辿った。

間合いを取るディーガン。


「火力が足りない…

出し惜しみしてる場合じゃないな」


 そう言うと、右手から光が漏れる。

その光は瞬時に棒状へ変化し、不自然に太い柄と

小さな刃が沢山ついた物に変化した。

ていうか、あれ、え?


「チェンソー・・!?」


 オレの一言を、

ディーガンは聞き逃さなかった。


「…っ。やはり、記憶を読んだか!」


 高速でこちらに突進してくるディーガン。

いや、え?記憶?

躱すこともせず棒立ちのオレに

チェンソーが振り下ろされる。

 金属がこすれる爆音が周りに響き、

次々に刃が駄目になっていく。


 しかしそのたびに、

ディーガンの手により刃が再生され、

オレの体を削り続ける。


「貴方には悪いが、

ここで死んでもらうしかない。」


 ディーガンの左手が光る。

どうみてもドリル。

それをオレの腹に目がけて

躊躇なく突く。


 金属が削れていく爆音のなか、

オレはまた、ため息をついた。

はあ。また敵対パターンか。

それじゃあ…仕方ないや。


爆殺っと。



 顔をあげ、ディーガンの顔を

至近距離で見た。

そのキリリとした眉は

逆8の字に曲がり、

目には後悔の色を浮かべ、

口は一層への字になっていた。


 なんて辛そうな表情。

なんだよそれ。

めちゃくちゃ

無理してるじゃん…


 オレは、出来る限り優しく、

ディーガンの腕に手を伸ばす。

敵意も力も込めていないオレの両手は

難なくディーガンの両手を掴めた。


予想外の行動だったんだろう。

ディーガンは一瞬固まり、

金属の爆音が止んだ。


「あのオレ、異世界から」

「ち、地球の、日本から!」

「…来たんだ」


ぶつ切りの日本語を話す。

クティオ語ではなく、日本語を。


ディーガンの顔は、驚きと、

理解不能の事態に目を見開いたまま

止まっていた。


しかしその両手にある

チェンソーとドリルが、

小さな光となって消えていく。


これなら、

会話、できるかな。

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