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14回目の異世界転送 そのログ  作者: 代筆クリスタル
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「予知」(アンカー)を発動する。


 周りの世界に亀裂が入り、全てが

暗黒に染まっていく。

全身を打ち、あと少しで死ぬディーガンも、

後頭部を破裂させたリーフも、

駕籠の中にいるオレさえも、

全てが暗黒に吸い込まれていく。




…―――




 ゆっくりと目を開けると、そこは草原だった。

周りにはオオカミの死骸が散乱していた。

この星に転送され、最初の敵に襲われた場所に

オレは立っていた。


「予知」(アンカー)


 この能力の説明はややこしい。

一言でいうならば、ループだ。

一日が始まり、生活し、夜に寝て、

起きたら、なぜかまた一日目が始まる…


そういう能力だ。


 ただ、厳密言えばこれはループではない。

星をいくつも救い、神かそれ以上の能力を

手にしたオレでも、時を遡るなんて事は

出来ない。


 多分、そんな事、本当の神様でも

出来やしないんだ。


 ではなぜ、ループなんて能力があるのか。

答えは簡単だ。さっきまでの瞬間、

黒龍に襲われ、全滅したあの瞬間。

それらをすべて

予知「だった」という事に出来る能力。


それがループ能力の正体だ。


 さっきまで体験していた現実が、実は

予知で体験していた幻にすぎなかった。

現実のオレはこの星に立って10分も経ってない。

 盗賊の砦に行き、リーフを救い、街に入り、

ディーガンの黒龍討伐に付き合ったという

ここ2、3日が、すべて予知「だった」

という事に出来る能力。


それが「予知」(アンカー)だ。


 蛇足だが、世に言うループ能力とは

おそらく、予知能力なのだ。


寝て起きてループしたり、

死に戻ってループしたりする

共通点は、最初に戻る、という所だ。

だが、これ、

「最初からその場にいて、

何もせずに予知によって

未来の体験をした」

のとほとんど変わりがない。


 まだ体験してないのにも関わらず

未来の記憶が存在するのも同じだし、

ループ=予知によって未来を

知り、結果を変えることも

できるのも同じ。


 だからこれがオレの結論。

ループとは、予知である。蛇足終わり。


 ただし、普通のループ能力と

違う点は、いつ、いかなる

瞬間でも好き勝手に予知「だった」事に

できるという点だろうか。

究極のチート能力だろう。

ただし、代償も大きい。

とはいっても、寿命が減るだとか

正気を失っていくだとかそういう事はない。


 単純に、一度経験したことをもう一度

やらなきゃならないという

何の楽しみも発見もない事を

しなければならないのだ。


 これはもはや接待。接待イベント。

いや、イベントに合わせて動くんだから

イベント接待だ。


 これからオレは盗賊の砦に行き、

リーフを助け、何の話も聞かずに

砦を出て、街まで歩き、マロに発見され、

そのまま寝て、リーフのイケメンの視線で

気絶しなければならない。


 しんどい。

しかし過去をなぞらなければ、

あの黒龍のところまで戻れない。

ひとつでも手順を間違えると、

未来が変わる。

そのたびに「予知」(アンカー)で戻る。

このリセットマラソンは本当に

自分の心を削る。


はあ―……




………――



 はい。着きました。レッドサイクルの頂上。

黒龍がディーガンを上から睨んでいる

この時間に戻りました。

長かった…凡ミスで何度もやり直した。


「探索」(サーチ)


 息を大きく吸い、ディーガンへ落下する黒龍を確認。

上空の黒龍にまだ気づかないディーガン。

もう遠慮はしない。

 正直、イライラは限界をとっくに

超えてる。駕籠の中だったが、


「魔人化」(エビルモード)

「魔王技巧」(マスタースキル )

最大限に高め、

黒龍の体の水分という水分に

急激な圧力を加え、さらに

温度を急上昇させて一気に

沸騰させた。


 黒龍は自身の肉体の変調に

大混乱をきたしたようだ。


でも、もう遅い。死ね。


 黒龍の水分から

水素と酸素を分解し

程よく空気と混ぜて550度以上に

熱してやった。その結果、

黒龍はブレスを吐く暇もなく

大爆発を起こした。


 その爆風を、「魔王技巧」(マスタースキル )

圧力を操り、リーフやディーガン、

ここまで駕籠を運んでくれた人たちに

及ばないようにした。


 ボロキレの肉片と化した黒龍が

ディーガンの前に落ちてきた。


「お見事でございます。魔女様。」


 駕籠の傍でリーフがオレに

しゃべりかける。

オレがやったって解るのか

このイケメン…


 そのやり取りを見たディーガンの

雰囲気が、みるみる変わっていくのを

オレは見逃さなかった。


ああ、またか。


ディーガンからオレへと発する

殺気が明確に、濃厚になっていく。

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