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2-4 地下探し

次の日の早朝、ヴァロたちは地図に描かれた、地下への出入り口のあるという場所に向かった。

その場所は商隊のキャンプ地から、半日ほど歩いたところにあるという。

ただたどり着いたものの、目の前には樹海といっていいほどの森があり、

ヴァロたちは出入り口を探すことになった。


「こっちは特に何もなかったぞ」

「わかったヨ」

ヴァロは森伝いに出入り口を探し帰ってくると、ドーラに報告をする。

そのドーラというと地図と地形を何度も見比べている。

ドーラの話によれば、この辺りに出入り口があるのだという。

ヴァロはミイドリイクのある方角を眺めた。

巨大な城壁のはずがまるで粒のようだ。

地下施設が見つかったとしても、ここからミイドリイクまで一日以上かかるだろう。

その上ミイドリイクの地下は迷宮になっているという。

もし出入り口が見つかったとしても、一日以上は道の中で過ごさなくてはならない。

商隊から少し多めに食糧を買ってきて正解だった。

フィアが木の天辺から舞い降りてくる。

彼女は自重を消して空から出入り口の有無を調べていたのだ。

「フィアちゃん、何かみつかったカイ?」

フィアが着地するのを見計らって、ドーラが問う。

フィアはドーラの問いかけに首を振る。

「木の枝が多すぎて地面すら見えない。上から探すのはあきらめたほうがいい」

「あとはクラント君だけカ…」

しばらくして森の中からクラントが出てきた。

「だめだ。見つからねえ」

「クラント君、君も失敗か」

すぐに見つけてやると意気込んで森の中に入っていったクラントも

見つけられなかったようだ。

山の麓には樹海が広がっていて、

あまり足を踏み込み過ぎると、こちらが遭難してしまうおそれがある。

「少し休憩しようか」

そう言ってドーラは砂の上に布を広げた。

四人は囲むように腰を下す。

「その様子じゃ、ヴァロの方も無駄足だったっぽいな」

干し肉を片手にクラント。

「ああ。森伝いに一通り見てきたがこれといったものはなかった」

「これじゃ、結構出入り口を見つけるのは時間がかかりそうだネ」

ドーラはそう言って肩をすくめた。

「…ドーラ、本当にここに地下への入り口があると思う根拠を聞かせてくれ。

今の状況だと見つけるのは厳しいし、これ以上長引けば今日中には商隊のキャンプに戻れなくなる」

これ以上この場にとどまれば、明日まで棒に振ることになるのだ。

そもそもヒルデがどうしてそんなものを持っていたのか、わからないことだらけだ。

フィアは納得しているみたいだったが。

心配になってヴァロはドーラに尋ねる。

「ミイドリイクの水を地下を通して、そこの山の中腹にあるサロエ湖から引いてるって話だヨ。

ここはミイドリイクとサロエ湖との中間にあたるのサ。

何らかの施設があったとしても不思議じゃないネ

それにこの地図だけど、ミイドリイクの立地と照らし合わせて不自然な点は見つからなかったヨ」

本の知識も捨てたものではないらしい。

「俺からもいいか?」

横からクラントが声をかけてくる。

「?」

「あんまり人の過去をとやかく言うのは好きじゃねんだが…。

ヒルデの奴は昔そこの聖堂回境師をしていたんだ」

その言葉にヴァロは一瞬言葉を失う。

ヒルデさんが聖堂回境師だった?

確かにあの魔法の腕前ははぐれ魔女とは思えないほどずば抜けていたし、

その振る舞いにも隙が全くなかった。

ヴィヴィと同じ聖堂回境師といわれても納得してしまう。

「…フィア…本当なのか?」

ヴァロはそばにいるフィアに問いかける。

ここにその現役がいるのだ、彼女に聞くのが一番早い。

「ええ。彼女は元ミイドリイクの聖堂回境師よ」

「…嬢ちゃんもやっぱり気づいていたのか」

クラントの問いかけに、フィアは首肯した。

「…ヒルデといわれて知らない魔女はいない」

ヒルデがミイドリイクの聖堂回境師だったのならば、この地図に俄然信ぴょう性が出てくる。

「出口をみつけるのは厳しかもしれないが、もう少し信じて探してみるのも悪くないと思うぜ」

クラントのその言葉にヴァロは同意せざる得なかった。

「ミイドリイクの生命線があるんダ。簡単に見つかりやすい場所においてはないだろうネ。

けど必ず見つかるサ。根気よくいこうヨ」

クラントは砂漠と森の境を見渡す。

「俺からも質問いいか?」

「なんだいヨ?」

ドーラはクラントの方を見る。

「こう砂漠があって、すぐに樹海とか、普通ならあり得ないだろう」

「おや、鋭いネ、クラント君」

「伊達に大陸中旅しちゃいねえさ。ここは森というよりは樹海だ。

大体砂漠っていうのは、大概は干ばつが影響してるんじゃないのか?

砂漠の近くに樹海ってのは理屈に合わねえんだよ」

干ばつというのは雨が降らないことだ。

気候の関係上大陸にはササニーム地方ほどではないが、砂漠と呼ばれる場所のある地域はある。

「ミイドリイクその一帯はかつては緑に覆われた樹海だったと聞いているヨ。

ミイドリイクという地名は現地の言葉の森の丘っていう言葉がなまったものだといわれているのサ。

かつてあった戦争がその樹海を植物すら生えることの許さない、

砂漠に変えてしまったと言う話だ」

「戦争?第一次魔王戦争か?」

第一次魔王戦争の現存する記述は少ない。

一言にいうならばその激しさゆえである。

「それよりももっと古い。君らの言うところの有史以前に行われた戦争サ」

それ以前昔の戦争をヴァロたちは知らない。

いや知りえる人間などこの世にはいないのではなかろうか。

「有史以前?」

教会が発足した時代からしか、記録は残っていない。

教会の発足したのは第一次魔王戦争の中期からだという。

「あったのサ。もう記録にすら残っていない戦争がネ」

「まるでそれを知っているようなくちぶりだな」

「さあ、僕もよくは知らないヨ。ただ、この大陸のいたるところにその痕跡が残されているんダ」

「まさか…ミイドリイクもその一つなのか?」

「その通りサ」

ヴァロの問いにドーラは笑って応えた。

「誰と誰が、いつ、どこで、どうして戦ったのか、そこにどんな文明が存在したのカ。

肝心の記録は第一次魔王戦争時にほとんど消失してしまったから、それを知ることはできないけれどネ。

書物も人も伝承も伝統も、あの戦争がすべてを無くしてしまったからネ。

それがあったという遺跡は数多く存在するのだけれど…」

少しさみしげにドーラは語る。

「それがドーラさんが、今回同行を希望した理由なのね」

「そうサ。誰も知りえないことを知るなんてわくわくするダロ。僕はそれを解き明かしてみたいのサ」

どうやらそこにドーラの目的はあったようだ。

それにしてもドーラですら知らない昔があるとは想像がつかない。

「いいねえ。訳のわからないやつだと思っていたが、なかなかに熱いんじゃねえの。

なんかあんたのこと少しだけ見直したぜ」

ヴァロもクラントと同感である。

友と呼ばれているものの、元魔王であるこの男を心の底から信じ切れていなかったのもまた事実。

性格は嫌いではないが、いまいちこの男をわかりかねていた。

「もっともミイドリイクまで着かないことには何も始まらないよネ。休憩後もがんばって探そうカ」

ドーラが立ち上がるのと同時に三人は立ち上がった。

出入り口探しの再開である。

「…それにしても範囲があまりに広すぎる。これはみつけるのに相当時間がかかるぜ?

ドーラさん、あんたの力でどうにかして場所を絞れないか?」

シートをたたんでいたドーラにクラントが聞く。

「そうだネェ…」

ドーラは考える要うな素振りをみせた。

「一ついいですか?」

横からおそるおそるフィア。

「なんだい、フィアちゃん」

「もし施設があったのならば、

使い手からも判りやすいように目印とかつけておくものではないでしょうか」

ドーラはそれを聞いて突然笑い出す。

「あー、盲点だったナ。使い手からの視点を考えてなかったヨ。

フィアちゃん、木の上から山の方になにか目印になるようなものがあったカイ?」

ドーラはフィアに尋ねる。

「…そうですね。目印かどうかは知りませんが、山の方向に、巨大な木がありました」

「フム、巨大な木ネ…。目印はおそらくそれだろうネ。

取りあえずそこまで行ってみようカ?」

ミイドリイクに行くまでの道中です。

古代戦争のくだりがあったけど、それもいずれ。

第一次魔王戦争もあとで書く時が来るでしょう。

ちなみにその戦争は第三魔王であるクファトスの祖父が起こしたものになります。

その時代の傷跡は人間を未曽有の危機にさらしました。

第二次魔王戦争はクファトスだけれど。

第一魔王のことはおいおい書くこともあると思います。

第一次魔王戦争以前が歴史区分としては古代かな?

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