6-5 大いなる中断
土埃が晴れるとヴァロとカリアの間に一人の男が立っていた。
大男がヴァロとカリアの間に割って入ったような形だ。
その男の身に纏うのは金色のオーラにより、剣の刃が届いていない。
それは魔力とは圧倒的に違う何か。
そう感じさせられるほどに濃く力強い。
「ローファ…様」
カリアは唖然とした表情で手にした剣を下げる。
「カリア、真剣勝負の最中すまぬ」
この男の顔にはヴァロは見覚えがあった。
ミイドリイクの街中にいたあの大男。
大男の立つ地面は衝撃により陥没していた。
人の身であれば、その衝撃により肉体は耐えられないはずだ。
目の前のモノは人ではない何か。ヴァロはこれはなにかの悪い冗談かと思った。
だが周囲の魔族が一斉にひれ伏しているのを見て、それが現実であることを知る。
ただヴァロは頭の整理が追いつかない。
「ドーラこれは一体どうなっているんだ?」
ヴァロは事情を唯一知っていそうな人間、ドーラに声をかける。
「彼は異邦の三王の一人。獣王ローファダヨ」
ドーラの簡潔な答えに、ヴァロたちは雷を受けたような衝撃を受ける。
獣王。
異邦を治める幻獣王の一人。
異邦の絶対権力者にして最強の獣。
その力は魔王すらも太刀打ちできないといわれる。
かつて第三魔王クファトスに大魔女たちと反逆したという七人の幻獣王の一人。
ヴァロはローファという大男が獣王であったという事実よりも、
そんな怪物が人間界にやってきているという事実に衝撃を受けた。
「カリアよ、人の子よ。すまんが、この勝負わしにあずけてはもらえぬか?」
すまなさそうな顔で獣王は二人に語りかける。
「我々の心は常に三王の御心とともに」
カリアはそう言うと剣を鞘に納めた。
ヴァロはあれほど決闘にこだわりを見せていたカリアが、潔く身を引いたことに驚く。
どうやら本当に獣王であるらしい。
ヴァロもそれに従い剣を鞘にしまった。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「今回の騒乱の一端はわしにもあるのだ。結界の不備はわしが招いたこと。
先ほど少女に諭されるまでわし自身も知らなんだ」
少女とはフィアのことだろう。
ドーラの言っていた言葉を思い出す。
「王命とあらば」
カリアはヴァロに視線を向ける。
「ヴァロ。この勝負の決着はまた後日でよいか」
「ああ」
おそらくすべてが終わってから改めてケリをつけたいのだろう。
剣を交えてみてみてカリアという男は少しわかった気がする。
一図なまでに頑固であり、誇り高く、真っ直ぐなのだ。
ヴァロはこの男は騎士として好感を抱き始めていることに気づく。
敵に好感を抱くことは問題ありなのだが。
獣王はエレナの前に進み出る。
エレナは身構え、クラントは魔剣に手を書けるが、獣王は全く気にする素振りを見せない。
「ミイドリイクの聖堂回境師、一つ聞いてはくれまいか」
「…」
エレナはクラントを下がらせる。彼女なりに獣王に誠意を示したのだろう。
「今回の騒動の一端となったのはこの地に眠る遺跡が発端なのじゃ。
数週間前に異邦に持ち込まれた人形の欠片。
それを見た現異邦の王権をもつアデルフィが激昂しおっての。
わしとバルハロイの奴の反対を押し切って軍を差し向けおった。
このままではアデルフィの奴も納得がいくまい」
異邦での王権は周期的に交代制で行っているという。
アデルフィというのは幻獣王の一人の邪王だとそれらは少し後で聞かされる。
ドーラの奴、以前呼び捨てていたような気がする。
「そこで無理を承知でわしから一つ頼みがある」
「頼み…?」
いきなりの展開にエレナも動揺を隠せない。
「北東に新たに発見された遺跡の調査に我々も立ち会わせてはもらえぬじゃろうか?」
獣王の提案にエレナはしばらく考え込む。
「…ラフェミナ様に判断を仰ぎたい。
そちらに交渉をする意思があるのならば、まずはそちらの行っている通信妨害を解除してもらえるか」
ローファはカリアに視線を向ける。
「わかりました」
カリアはあっさりとそれを承諾する。
そしてこれは同時に始まりでもあった。
これが大陸で人間と異邦との初めての共同作業となるのだ。
これにてこの章は終了になります。
後はエピローグだけやね。
エピローグは獣王とドーラの会話。
壮大なネタバレ含みますw
これから魔軍との共同作業ですったもんだあるわけです。
そして次章遺跡探査へ。
ミイドリイク北東の遺跡で待つものは何か?
魔族サイドも全力で力を振るいます。
聖剣も本領発揮。ローファやドーラルイも力の一端をかいま見せます。
ああ、楽し。




