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6-4 決闘

太陽はそろそろ中天に登ろうとしている。

冬だというのに照り返しで焦がれるような暑さだ。

見渡す限りの砂の上で、魔軍の騎士がその場を取り囲む。

ヴァロは聖剣を足元に置き、ゆっくりと足を踏み出す。

「逃げるかと思ったぞ?」

カリアの顔は言葉とは裏腹に笑みに満ちていた。

研鑽を重ねてきた自身の力を、存分に振るえることがうれしいのだ。

同じ騎士としてその感覚は分からなくもない。

「逃げるかと思ったのは俺の方だ」

懸けるのは誇り。

聖剣、魔力は使わない。それは所詮は口約束。

窮地になれば相手は魔力を使ってこないとも限らない。

ヴァロは直感だが、この相手は約束を反故にするということはないような気がした。

だからこそ最期まで胸を張ろうとヴァロは心に誓う。


昨夜、ドーラから聞いた言葉を思い出す。

「ヴァロ君の狙いは悪くないヨ。魔力は魔族の動力源なのサ。

魔族は魔力を利用した戦術を使うヨ。

それを奪われれば相手はただの人間となるヨ。

加えて相手は剣のみというスタイルに慣れては無いからネ。

それを断つということは同じ土俵に相手を引き入れるということにつながるのサ」


「剣をここに」

周囲の魔族がカリアとヴァロに剣を渡す。

ヴァロはその剣を受け取り、感覚を確かめる。

人間が使うモノとほとんど同じ仕様のようだ。

「交換しよう」

そう言ったのはカリアの方だった。

どうやら剣の細工を疑っていると思われてしまったようだ。

カリアとヴァロは剣を互いに交換するべく前に進み出る。

それは決闘前のいわゆる儀式のようなものだ。

お互いに柄を相手に向ける。

「異邦にもこういった慣習があったんだな」

剣を取るのと同時に、ヴァロがカリアに言葉を投げた。

「異邦を未開の蛮族の住まう地とでも思っていたか?」

「いや、ただ嬉しくてな」

ヴァロのつぶやいた一言に、

カリアは一瞬虚を突かれたような表情をみせた。

「変わった男だ」

一昔のヴァロならば皆と同じに、カリアの言葉通りに考えていたかもしれない。

しかし、ドーラと関わりあうにつれ、それが次第に変わってきていた。

「人間、貴様の名前は?」

互いに距離をとったところでカリアがヴァロに問う。

「ヴァロ=グリフだ」

「それではヴァロ=グリフ、いい勝負をしよう」

カリアは口元を釣り上げると剣を構えた。

それが開始の合図となった。


クラントはその戦いを見守っていた。

彼は決闘には一種の作法のめいたものがあると思っている。

決闘とは双方の合意により成り立つもの。

戦争とはある意味で似ており、ある意味で大きく違っている。

つまりは個人か集団かの違いである。

決闘とは互いのプライドの張り合いだ。いわば自己満足の塊でもある。

ゆえにその決闘は二人だけの取り決めの中で行われているものであり、

外野が手を出すことはもってのほかのことだ。

目の前に繰り広げられるのは一進一退の攻防劇。

既にヴァロとカリアは打ち合うこと十数合。

両者とも肩で息をしていた。

初めこそカリアとかいう魔族は動きがぎこちなかったものの、

思い出したように、ものすごい早さでなじんでいくのがわかる。

ヴァロの奴も相手を探っているようだ。

今では互い互いを引き上げているのがわかる。

拮抗する剣戟はめったに見られるものではない。

クラントは日陰にまわってから、久しく感じたことのない疼きを覚えていた。

それはずっと昔に忘れかけていたものだ。

背後から狙われることに気を張り巡らせる日々。

追われるということはそういうことだ。

決闘を神聖なものとまでは言うつもりはないが、クラントはそれを羨ましいと思った。

「俺がやればよかったな」

クラントのつぶやきは剣戟の音にかき消される。


剣戟は一時止まり、二人はにらみ合う。

ヴァロは相手に対して敬意を抱くのと同時に、体力の限界を感じ始めてきた。

お互いに汗だくになってはいるものの、その実は違う。

ヴァロは肩で息をするのが精いっぱいだった。

剣を持つ腕はもうしびれて感覚がないし、足は棒のようだ。

加えて少しづつだが、押されてきていると感じる。

体に残されているのは気力のみ。

昨夜ドーラから言われていたことを思い出す。

「ただし覚悟はしておいてネ。人と魔族は大きく違っているヨ。

彼らは水と魔力さえあれば何十日も生存可能。

つまりは内包している力が全く違うのサ。

五分ならば敗北は必須。やるのであれば短期決戦ダネ。

…どうするかは君に任せるヨ」

それをわかりながら挑んだのはヴァロ自身の意地だ。

剣を交換したときに妙な感情が芽生えてしまった。

この男には小細工なしで挑みたいという想いが。

ドーラにはあきれられているだろうか。

エレナにはすまないことをしたと思う。

騎士とか『狩人』という肩書を背負った今でも、本質は子供のころと何も変わっていないことに気づく。

なんのことはない。自身もまた子供だったということだ。

お互いに間合いを見極めながら、次の一撃に思いを張り巡らせる。

「…名残惜しいが、次の一撃で終わりにしよう」

「ああ」

体力の限界を感じつつあったヴァロはその提案を受け入れる。

互いに渾身の一撃を繰り出すべく剣を振り上げる。


そしてその出来事は突然起きた。

空から何らかの影が二人の間に落下してきたのだ。

その場には砂煙が舞い騒然となった。

ちなみにカリアは魔力を使って入ればめちゃめちゃ強いです。

エレナ、クラントでも勝てません。聖剣持ちのヴァロと同等かそれ以上ってところです。

ここだけの話ですが、侯爵クラスの実力を持ってます。

剣術のみというルールゆえにヴァロたちは対等に戦えただけです。

ヌーヴァはさらに…。まあそこはおいおい語らせてもらいます。

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