4-1 遺跡都市
遺跡都市ミイドリイクは大陸の中部に位置する。
過去に第一次魔王戦争、第二次魔王戦争時に最前線の基地として使われ、
異邦に接しているものの、東には聖都コーレス、北東には湖都市リブネントがあり、
西の交通の要所として現在も栄えている。
歴史が深く独特の都市構造をしていて、それを見るために毎年数万人の観光客が訪れるという。
さらに上下水道が完備され、住みやすい都市環境になっている。
それを視察するために、遠方からはるばるやってくるものもいるのだという。
「ここが遺跡都市」
ドーラは感極まった表情でそれを眺める。
ササニーム地方には一度来たことはあるが、ミイドリイクは初めてだ。
巨大な建造物が天に向かってそびえ立ち、それが通りを囲むように立ち並ぶ。
区画は整然と整備されていて、その計画性を感じさせる。
フゲンガルデンやコーレスとも趣が異なる都市。
砂漠に現れたそれはさながら蜃気楼のようだ。
ヴァロたちが地上に出たときは太陽は中天にあった。
地下でどうやら丸一日ほど過ごしたらしい。
「まずはヒルデさんのところに行って挨拶しないとな…」
ヴァロがそう言って、仲間の方を振り向けばクラント以外ついてきていない。
フィアとドーラは地下の出入り口付近で、茫然とその光景に見入っている。
「ドーラ行くぞ」
ヴァロはものすごい速度でドーラを連れ戻しに戻る。
「ああヴァロ君、すごいヨ。あんな建物どういった建築法でつくられるんだろうネ」
「後で好きなだけ見てくれ。今は足を動かしてくれ」
ヴァロに首根っこをつかまれ引きずられながらドーラ。
周囲の注目お構いなしだ。その様子はまるでおもちゃを見つけた子供の様。
「はいはい、わかったわかった」
このままだと放置しておけば、何時間もここにいることになりそうだ。
「フィアも」
いつものことながらフィアも目を輝かせ結界に見入っていた。
「これがミイドリイクの結界…」
フィアは熱のこもった瞳で、うっとりと宙を見上げている。
その姿はまるで夢見る乙女とったところか。
魔法使いってのはどうしてこんな連中ばかりなのか。
二人を引きづりながら、ヴァロはため息をついた。
「ククク…がんばれー。ヴァロお父さん」
クラントがしゃがんで声をかけてくる。
「手伝ってくださいよ…クラントさん」
「そりゃ護衛の務めだろう」
ヴァロは頭を抱えた。
「本当にすみません。まさか本当に聖堂回境師だったなんて」
バーベナの一言にフィアは現実に戻ってくる。
「いえ、私も就任したてで日も浅いので…」
フィアは笑ってそれに応じる。
フィアは知名度が皆無だ。
この様子ではそのほかの土地で名乗っても信用されないだろう。
「自身の住処にエレナ様は戻られました。私は任務のためここを離れられません」
「こんな状況です。お互い気遣いは無用で」
「代わりといってはなんですが、案内はこの子が導いてくれるはずです」
そういったバーベナの足元には、ヘルメットをつけたネズミが二足歩行で立っていた。
ササニーム地方に生息するネズミで、砂ネズミとよばれている。
にしてはかなり大きい。立っている背丈は人の膝ほどはあろうか。
野生に生息しているもののゆうに三倍の大きさはあろう。
「これで地下の監視を?」
「はい。百ほどを現在地下の施設監視に放っております。
ちなみに先ほどエレナ様に連絡を取ったのもこの子たちですよ」
クラントが地下で視線を感じるといったのは、この砂ネズミたちのことだったらしい。
確かに彼らならば地下迷宮の監視は容易だろう。
「魔法なの?」
「魔法とは少し違います。しいて言えば魔術でしょうか。
私の家系は、代々魔力で動物を使役することを生業としている一族でして。
それがエレナ様の目にとまり、地下の管理を任されたのです」
「素敵な魔術ね」
フィアの笑顔にバーベナは顔を赤らめる。
「もし何かあれば声をおかけください。私であればよろこんで力になります」
「ありがとう」
「それと、現在どういうわけかこのあたり一帯で通信系の魔法が一切使えません。
エレナ様は原因は調査中といっていました。そのため外とは連絡がとれなくなっています。
不都合はあるでしょうが、了承ください」
魔軍の発している波動により、通信魔法は使えないとドーラは言っていた。
どうやら末端には魔軍のことは知らされていないようだ。
理由は混乱を避けるためだろう。
「早く回復するといいですね」
フィアはにこりと微笑む。すでにバーベナの顔は耳まで真っ赤だ。
「護衛の方…」
「ヴァロだ。ちなみに俺は『狩人』でフィアの護衛をしてる」
『狩人』という言葉にバーベナはあからさまに安堵する。
「なんだ、『狩人』でしたか…。先ほどはすみません」
少しだけほっとしたのだろう。
そもそもただの人に負けるとか、魔女としての沽券に関わることだろう。
「あれは事故みたいなものだ。気にしてないし、他言するつもりもないよ」
「ありがとうございます」
ヴァロはこれ以上、要らない二つ名はもううんざりなのだ。
そうしてヴァロたちはバーベナと別れた。
すでにギャグですね。
フィアは一度コーレスでおんなじことしてます。
さらに重症化しておりますが(笑)
ドーラと比べればかわいいものかな。
さてこれから折り返し。漸くミイドリイク到着。
ちょっとした大事件に発展していくのですが…。
うまく描き切れるのを願うばかりです。




