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3-1 地下

ごおおという水の流れる音が絶えず洞窟内に響いている。

真っ暗で、時間も距離もわからない空間の中で、どれほど進んだのか見当もつかない。

ヴァロたちは現在ミイドリイクへと続く地下水路を歩いている。

フィアの見つけた木を調べると、根元付近には空洞があり、そこから地下へと続く階段があった。

階段をしばらく下ると、水路にたどり着いた。

少しづつ近づいてきているのは間違いはないが、進んでいる気がしない。

地中にいるために温a度も一定に保たれていて、足場もしっかりしていて、フィアの扱う魔法の光で、足元の心配もない。

砂漠を移動するよりははるかに楽である。

ただこう先が見えないと精神的にきつくなってくる。

ヴァロはフィアを見た。

この中で最も体力のないのは彼女だ。

朝から砂漠をずっと歩き続け、弱音一つこぼさない。

大丈夫な素振りをみせるものの、心なしか進む速度が遅れてきているようにも感じた。

負けず嫌いのフィアである。指摘でもしようものならばそれを必死に隠そうとするだろう。

師と二人で旅しているときには考えもしなかったことだ。

「ミイドリイクの封鎖結界ってどんなものなんだ?」

ヴァロは気を紛らわせるために、フィアにその質問をした。

「ミイドリイクの結界はさっきも言ったように封鎖結界。

異邦との境付近に位置しているために、異邦から魔物が流れ込みやすい環境なのよ。

そのために魔物などの魔力を持つものを近づけさせない構造になってる。

戦時には大陸西部の最大の砦になっていたらしいわ」

「フゲンガルデンとは違うんだな」

「ええ。結界は大陸の要所となる都市に張られていて、

結界はその都市によって張られている目的、用途がそれぞれ違うのよ。

ちなみに私たちの住んでいるフゲンガルデンは絶縁結界。

その中では一切の魔力、魔法の類が使えない。元魔王の居城跡だったために強力な魔力が残存し、

それを封じるためにその結界を張ったといわれているわ」

表向きにはそういわれている。事実はかなりねじまげられているのだが。

「コーレスの結界は対魔結界。これ聖都コーレスが戦争の最前線になっていたために

魔に対抗するべく作られた結界といわれている。

魔力を持つ者にはその魔力の段階に応じて攻撃を仕掛け、排除しようとする性質がある」

あまり思い出したくない聖都での事変を思い出す。

第四魔王が復活した際、結界は第四魔王の魔力に反応し、

鐘をけたたましく鳴り響かせ、第四魔王に攻撃をしかけた。

あれが結界の排除しようとする力なのだろう。

「さらに術者の意志で結界の力を操作することができるわ」

ヴァロは首肯し、フィアが結界の中で重い荷物を楽々と運んでいたのを思い出す。

あれは結界の力を使ったものであるということをヴァロは後で聞かされている。

彼女たちは自身の管理している結界の中でならば、魔法のようなものを使えるのだ。

「ちなみに他にどんな結界があるのカナ?」

ドーラが興味深々とした様子でフィアに聞く。

「交易都市ルーランの暗黒結界、氷の都ミョテイリの氷結結界、湖都リブネントの静謐結界、

空中都市トラードの掃滅結界。私も本でしか見たことがないから詳しくはわからないけれど」

「うーん、歴史のある都市ばかりだネ。是非一度行ってみたいところダ」

元魔王はそんなのんきなことを平然と言ってのける。

ここでいう言ってみたいというのは間違いなく観光だろうなとヴァロは思った。

「…とにかくミイドリイクの結界は魔法を使えなくなるわけではないんだな」

「ええ。そういう類のものではないとは聞いてる。

おそらくフゲンガルデンとコーレスとかと比べて、規制は緩いと思う」

「それならいいんだが…」

ウルヒの時の例もある。

聖堂回境師という魔女の中でも数人しかなりえない職に就いているフィアでも、

魔法を使えなければ、ただの人間の少女と変わらない。

できることとできないことを知っておくだけでも、護衛としての対応が違ってくる。

「…心配してくれてるんだ」

ぼんやりとフィア。

「そりゃ、護衛だしな」

そうヴァロが言うとフィアの顔が赤く膨れた。

「…馬鹿ヴァロ」

口をすぼめて距離をとられてしまった。どうやらフィアの機嫌を損ねたようだ。

女性の考えはいまいちわからない。

ヴァロが首をかしげてると、横からクラントが声をかけてくる。

「カッカッカ、お前さん女の扱いがなっちゃねえな」

「うるさいな」

ヴァロはクラントに視線を向ける。

クラントは世界中を旅しているという。

今フィアの言った都市はどれも大陸の交通の要所となる場所でもある。

ならばそのくつかの都市には行ったことがあるのではないか。

ふとそんな考えがよぎった。

「…クラントさんは今言った都市には行ったことはあるんですか?」

「ルーランとトラード、ミョテイリ、コーレスにはいったことがあるぜ。

結界が張ってあるのは気付いていたが、その効果まで知らなかったな」

「ですね」

ヴァロですら、フゲンガルデンに住みながら結界が張ってあるなどと少し前まで知らなかったのだ。

住んでいるものでさえ、一部の人間しかその存在を知るものはないだろう。

「ただ一つ注告しておいてやる。…今後もし行くことがあるならルーランだけは気を付けたほうがいい」

「なぜです?」

ルーランはこの大陸の玄関でもあり、他の大陸からの商人が多くやってくる。

この大陸でもっとも活気のある都市のひとつである。

大陸一大きな歓楽街をはじめ、多くの商会の本部がひしめき合い、そこにいけば手に入らないものはないといわれるほどだ。

騎士団の任務で若いころ一度滞在したことはあるが、それほどやばいとは感じなかった。

ただ思い返してみれば、師ギヴィアも避けていたような節がある。

「あそこは魔窟だ。下手してトラブルでも起こした日にゃ、生きて出られねえぜ」

「魔窟?」

聞きなれない言葉をヴァロは反芻する。

「行きゃわかるさ。俺は金輪際近寄りたかないね」

「クラントさんでもこわいものはあるんですね」

「ぬかせ」

この時その意味をヴァロは軽く考えていた。

そして、しばらくあとでそれを身を以て知ることになるのだ。

「さてとそろそろミイドリイクだヨ。外ももう夜中だ。

迷宮に入る前にここら辺で一休みしようヨ」

ドーラの一言にヴァロたちは驚く。

「何でわかる?」

「配管の区切りを数えていたのサ。それがわかればおおよその距離と時間は推測できる」

さすがドーラといったところだろう。

「抜け目ないな」

「やだなあ、そこはしっかりしてると言ってくれヨ」

迷宮に入る前に一休みすることになった。

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