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「あー‼︎糞っ‼︎」
先程のこともありイライラする。
タバコを吸い直そうかと思い箱の中身を覗いたが空っぽだった、あれが最後の一本だったらしい。
ため息が口から漏れる。
取り敢えず事務所に戻って家賃分の金を工面しないとな、売れそうなの処分するか。
取り敢えずの目処を立てつつ歩み続けていると鼻腔に香ばしい匂いを感じる。
匂いの元は近くの定食屋だ。
いい匂いさせやがって、こっちは朝から何も喰ってないっていうのによぉ。
自業自得なのはわかっているが、定食屋に入っていくスーツ姿のサラリーマンが恨めしい。
足を止めて財布を開くがお札は一枚もなく小銭も鈍く光る五百円玉だけだ。
いい年して手持ちの金がこれか、思わず自嘲してしまう。
看板にはカツ丼四百八十円と書かれており、ギリギリ足りる金額だ。
一瞬悩むが歩き出す。
カツを喰ってゲンでも担ごうかと思ったがやめておくか……ジュースでも飲んで誤魔化そう。
そう考え事務所近くの自動販売機を目指して歩き始める。