朝食で超ショック!
「なななな、なんなんですか!?あれは!何者かが私のお尻を狙っていましたわ!」
慌てる私の肩に両手を置いて夕熾様は言いました。
「落ち着け。言い忘れてて悪かったが、あれはああいうもので、意図的に設置してあるものだ」
「え?」
「その、だな。用を足した後に洗浄するもので、俺の世界では一般的だったから、その、うっかりしてた。スマン」
「いえ、あの私も突然のことで驚いてしまって申し訳ありませんでした」
冷静になってくると、口走ったことや、用を足していたことを自白したようなものなので恥ずかしいです。しかも両肩を押さえられているので真正面から見られているではないですか!
「まぁでもお姫さん、姫さんはダンジョンとかは向いてないと思うぜ」
「はい?」
突然なんでしょうか?
「これみよがしなスイッチとかも押しちゃいそうだからな」
ニシシ、とからかうように笑われるのですが、実際その通りのことをした身であるので言い返せません。
黙ってポカポカと殴りつけたのですが、全く介する様子もないのは・・・
当然と言えばそれまでなのですが、ちょっと悔しいです。
後になって考えてみれば、話を逸らせてくれたんでしょうか。
与えられた部屋に向かう途中でそう思ったのでした。
そして部屋の戸を開けてビックリです!
天蓋つきのベッドです。ってこれ私の部屋にあったやつですよね。
どうしてここに…って夕熾様の仕業に違いないんでしょうね。
きっとお城じゃ大慌てなのではないでしょうか。
買ってもらった服に着替えて(いつも着替えさせてもらってたので苦労はしましたが)ベッドに入るとすぐに意識を手放してしまったのでした。
眼が覚めれば見慣れた天井でした
じゃない。
ベッドが替わってないだけでまるっきし違う部屋で混乱したのは一瞬のこと。ああ、そういえばと昨日のことを思い返します。
「お~いお姫さん、起きてるか~?朝飯にするから着替えて茶の間に集合な」
「は、はい!すぐ参ります!」
時間のほどはよくわかりませんが寝過ごして夕熾様に朝ごはんを作らせてしまったようです。早速失敗です。それにしてもいい香りですね。
このうっすらと甘い香りは何なのでしょう?
「お早うございます、お待たせいたしました」
「おう、おはようさん」
見苦しくない程度に慌てて身支度をして"茶の間"へいくと、足の低い丸いテーブルに料理が乗っています。このいい香りの正体はあのパンでしょうか?
「ごめんなさい。朝食を作るのを手伝うつもりが寝過ごしてしまいました」
「昨日の今日だからな、疲れてたんだろう。まぁおいおいな。冷めてしまうから早速食べよう。」
「いただきます」「大地の恵みに祈りを」
手の形こそ違うものの、恐らくその言葉に込める願いは似たものなのではないでしょうか。
パンに卵とハムの炒めたもの、それから野菜のスープに果物…アプールを搾ったジュースとシンプルなメニューです。お城で出るもののように着飾ったものではありませんが、味はとてもおいしいです!毒見で冷めていないというのもあるのかもしれませんが。それ抜きでもおいしいです。特にパンは・・・うっすらと漂う甘い香りはもちろんのこととってもふぅわりと柔かいのです!
視線を上げればしてやったりとばかりにこちらを見ていた夕熾様。
ああ、夕熾様といると恥ずかしいところばかり見られてしまって困ります。きっと今私の表情はキラッキラでしょうから。
「こんなおいしいパンは王族でも食べていませんよ。一体どこで・・・。父上がこのことを知ったら王族よりうまいものを食すとは何事だ!なんて出所を探られるかもしれませんね」
「ああ、俺が焼いた」
「は?」
何といいましたか?
「だーかーら、俺が焼いたっての」
「えっと、夕熾様はパン屋さんだったのですか?」
「んや。まぁ知識だけはあったんでな。こちらの世界のパンが固すぎてさ。人間食べることって結構必死になるのな」
「魔法で上等な小麦を出したとか?」
「んや、まぁ城にあったやつだからいいとこのだとは思うけど」
・・・あなた、何やってるんですか。