新居
「な、なんで家が建ってるんですか!?」
「俺が建てたからな。」
1日、いえ、私が最後に見てからちょっと長めに買い物してしまったとは言え、5時間ほどでしょうか?大目に見ても四分の一日である。
「四分の一昼城、とでもいうのかな」
「城?ですか?」
「いや、俺の居たところでは一晩の間に城、実際は砦かな?を建てたっていう歴史上のエピソードがあってね、それが「一夜城」って言われてたんだ。それにちなむとってことさ。もっとも外見だけで中はすっからかんなんだけどね」
魔法がないと聞いている夕熾様の世界で一夜で城を?って魔法ありでも一昼夜でお城なんてできるもんじゃないんですけど!?
っと木造の家がないわけじゃないんですが、これはどうも変わってますね?夕熾様の世界ではこんな家だったのでしょうか?というかこんなにササッと家を建てられるのに何故あんな家にあばら家に住んでたんでしょうか?
「ここで靴を脱いでくれ」
入り口を開いて入ったエントランス?でいきなりそういわれました。
「土や埃を家の中に持ち込まないようにするんだ。」
いわれてみれば納得できるところもありますね。
靴を脱ぎ、側で屈んで向きを変える所作はどこか貴賓があり、美しく思えました。私の国の文化とは違う、なじみのないものでしたが、真似をしてみたのでした。
なぜか妙に脚の方に視線を感じた気がします。
「ここがリビングだな。まぁ一同がくつろぐ部屋だ」
そう言って案内された先は広い部屋でした。
まだ何もないガランとした部屋ですが、いえ、ここをこれから住みよくしていきたい、という希望が溢れているのでしょうか。
「ここは「茶の間」だな。」
「「茶の間」、ですか?」
「一緒に食事をしたり、同居人一同が団欒をする部屋だ」
「リビング、とはどう違うのです?」
「……どちらも団欒の場、という意味では変わりないが、食事を共にとる「ダイニング」の場所も兼ねていること、そしてこちらは床に座るのが基本、かな?」
「え?」
私は床に座る、ということをこれまでしたことがないのです!
しかし、夕熾様は実際に、中央に置かれた円形の低いテーブルを中心に座っておられ、とても様になっていました。
私もおずおずと座ろうとしてみたのですが、夕熾様のように足を左右に
開いて(胡坐というらしいのを後に聞いた)座るのは絶対に無理として他にもいくつか座り方を聞きましたが、その日はひとつもできませんでした。なんというか、どうしたらいいのか本当にわからないのでした。
「炬燵ができるまでには床に座れるようにしておいたほうがいいぞ。後はなんとか畳が…」
コタツとはなんでしょうか?う~む、私、気になります!
そしてキッチン。
「ありえない……」
私は思わず呟いた。
通常よりも遥かに広い調理台はともかく、こんろ?にじゃぐち、れいぞうこ。なんのことだかさっぱりわからない。
ちくいち説明を受けていた私はきっと目を輝かせていたのでしょう。
私を見る生暖かい目に気づいていたたまれなくなった。
魔法のない世界では魔法なしで実現させていたらしい。
私にはそのほうが魔法のように思えるのだけれど。
「電子レンジがなんとか再現できたらなぁ…」
ってまだ便利なものがあるのでしょうか!
色々なものを見せられてプスプスとオーバーヒートしていると、目の前にかわいいコップが置かれる。
中はあたたかいミルクでした。ホッとしましたよ。
「まぁ、徐々に慣れていけばいいさ」
そうですねいきなりはちょっと…無理ですが正直便利なんですよね。
お城にいたときよりも…
「うひゃあ!お尻に水がっ」