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勇者リボルト  作者: 夢辺 流離
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作業服

 「お姫さん、あんたが必要なものを買ってこないとな。」


            ズドンっ!


 夕熾様は私と話しながら魔法で作業をしていらっしゃいました。

なんでも基礎・土台が大事なのだとか。土属性の魔法で掘られた穴底は均され、穴を掘る途中で出てきた石を底に敷き詰め、形が板状になったりする。


 はっきり言ってどれも普通の魔法とは使い方もその威力も違う。

いったいどうなっているのだろう?


「とりあえず、王都に連れて行くからさ。当分必要そうな服とか買っておいてくれ。1時間もあれば十分だよな。」


「え?」

「え?」


 思わず口をついてしまった私の疑問に、続く夕熾様の声。


「お姫さんだもんな。服を仕立てることはあっても買うことは分からないか。そうだよな」


「いえ、そうではなく。登山用に服を買いましたし、購入はできます。そうではなくて、衣服を買うのに1時間って。その4倍は最低でも必要でしょう?」


「ソウデスカ」


 ぎこちない夕熾様の返答に、私は人差し指を口元に当てつつ首を傾げてしまいました。


「えっと4時間だな…はぁ。じゃ、とりあえず4時間後に迎えにいくってことで。なんか危険な目に会いそうになったらこの短剣を握るんだぞ。あと、このローブを着てフードをかぶっておくんだぞ」


 夕熾様はため息をつきつつそう言いました。

何故ため息をつくのでしょうか?


 とりあえず準備を整えると、夕熾様に手を繋がれて目の前に現れた歪んだ真っ黒い円が現れて、それを抜けたらそこは街中だった。

これはー転移魔法!?一般属性や上位属性とも異なる特殊属性の時空間魔法と呼ばれておりますが、少なくともここ300年ほど使い手がおらず、最早真偽不明むしろ存在が怪しまれています。


 本当に存在したんですねーアハハー、はぁ。朝から驚かされてばかりですよ。


「あ、おばさん!」

「ユウシ!久しぶりに顔を見せたね!」

「今日はこの娘の服を見繕ってほしいんだけど」

「なんだい、ユウシのこれかい?」

「そそそ、そんなんじゃねえよ!とりあえず、頼んだからな!とりあえず、これだけあれば足りるだろ」

 金貨1枚を押し付ける。

「アンタ、王女様の服でも買うつもりかい!?」

「まぁ、姫さんだけどな。」

「フフフ、冗談は上手ね。」


 二人の会話はテンポよく進み、私が入り込む隙がありません。

「あんたがユウシの姫さんだね。ほら、そんな野暮なもんはお脱ぎよ」

 目の前のお姉さん---アレ?急に機嫌がよくなりました?---のホコがこちらに向き始めました。


「あら!なかなかカワイイじゃないの!ユウシったらどこで見つけたのよ?フフフ、そんな格好をさせておくなんてもったいないわ。さぁこちらにいらっしゃいな」


 その様子はさながら獲物を引きずるブラッド・サーベルでしょうか。

あ、みたことはないんですけどね。

視界とは逆の方向に引きずられていってます。もうそれでいいです。


 ひたすら人形のように服を着させられ続けました。

お城にいたころと変わりないんじゃないでしょうか?


「あ、あの。」

「なんだい?この色が気に食わないかい?」

「いえ、そうではなくて。その、作業をするのに向いている服もほしいんです。お掃除とか選択とか料理とかってどうしました?」

 お姉さんが目を開いてこちらを見ていました。

「いやさ、ユウシが貴族のお嬢さんを気に入って駆け落ち同然にさらってきたんだと思っていたからさ。その器量だし。まぁお貴族様ほどの扱いはできなくてもきれいな服をあげたいんだろうなって思って選んでたんだけど…そういうことならっと」


 お姉さんは奥にある箱を取り出して開くとそこにあったのは…。



「お姫さん、どうだい、買い物は済んだかい?ってなんぞぉお?」

「ファルさんにご相談したら、これはどうかって」

 お姉さんの名前はファルファーラさんというらしい。ファラさんと呼ばせてもらう。


          メイド服


 日本のサブカルチャーの安っぽいそれではなく、

高級な生地で丁寧な作りであり、とてもお姫さんが着る服じゃないんだが、やっば!メイド服って本当に作業用の服なのだろうか?

エプロン部分とつけ袖を外した状態ではそれなりのドレスのように見える。ちょっと長めの胸元のリボンがかわいい。ゴシック風の雰囲気が高貴さを醸し出している。お姫さんが幼かったらゴスロリだったんだろうな。


 などと夕熾が思っていたことを知る由もないが

「あの、作業服でこういうのもどうかとは思うのですが、その、似合いますか?」


 夕熾には頬を染めて上目遣いでチラチラこちらを窺っているように見え、その様子に悶えている。


「に、似合うんじゃないか?」


その一言を聞いてぱぁっと表情が明るくなり、夕熾をノックアウトしたのは言うまでもない。


「買うだろ?」


「俺、死んじゃうかもしれない。なんでこんな服があるんだよ!」


「うん?隣国ではこれが侍女の制服らしくってね。勉強のためにしいれてたのさ。輸入物だからちょっと高いんだけどね。」


 そういってファラさんは手を出します。

値段については分かりませんがきっと高いのでしょう。

私がオロオロしていると、

「まさかお嬢ちゃんに今更脱げなんていわないだろう?」

「わぁったよ」

 そういってもう一枚金貨を手の上に乗せました。

「あの、よろしいのでしょうか?」

 私はそう聞かずにはいられませんでした。

「ククク…男の甲斐性ってやつさ」


 結局メイド服とお人形にされた服を渡され、夕熾様はそれをどこかにしゅばっと消してしまいました。


「いつみても不思議だねぇ」


 とはファラさん。


恐らくこれも時空間魔法でしょうね。

ぼうっとしていた私の手をとって


「じゃあな、また来るよ」

「今度来る時はまた別の女連れかい?」

「ちっげぇよ!」


そんなやりとりを最後に転移しました。って


 木造の家が建ってるんですけど!?



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