動き出したもの
「……なぁ、お前らずっとこっちにいるけどさ、向こうのことほったらかしでいいのか?」
メイオさんが呆れた顔で言いました。
実のところ私も気になってはいたのですが、
「魔牛たちをメイオに任せるのは不安だ。姫さんあと1日でいい、待ってくれ!それでスイッチ一つで済むようにしてみせるから!」
と肩をつかまれて必死に言われたら首を縦に振るしかありませんでした。
そんなわけで夕熾さんは食事以外は引きこもりっきりで作業しています。
まぁ、牛さんたちを連れて来るのにも相当頑張ってましたし気持ちはわかります。私としても美味しい魔牛乳ーーー言いづらいですね、何か言い呼びなはないものでしょうかーーーを頂いていますし、牛さんたちが不遇な立場になるのは嫌です。そもそもメイオさんはきっとグウタラしたいのに私たちがいるとそうもいかないとかそんな理由の気がします。
そしてその日の夕方になって獣舎は完全に別物になっていました。スイッチ一つでペイッと牛さんたちを放牧したり、水が流れて汚物は消毒だぁ!だったり、40秒で食事しなとばかりに餌が補充されたり至れり尽くせりです。あ、ちなみに今のは夕熾さんの説明をそのまま言ってます。意味はよくわかりません。
「ここまですればメイオでもなんとかできるだろ」
「お前ら、私を馬鹿にしてないか…?」
夕熾さんの表情はともかく目が笑ってません。多分私もそうかな。
「便利になって助かるが、なくたってちゃんと面倒をみられたんだからなっ!まぁ、一人じゃ消費しきれないし、取っておくから受け取りに来いよ!」
そして私たちは扉をくぐって自分たちの家に戻ったのでした。造りが一緒なのでわかりづらいですけどね。
「とりあえず、食材を買って来よう」
冷蔵庫を見た夕熾さんが言いました。持ってきた魔牛乳しかないですからね。
臆面もなく王都の城下町に飛ぶ夕熾さんに呆れながらも連れだって歩きます。どうも町中はいつもより賑やかな気がします。石畳の上に紙が散らばっていて、その一枚を取り上げました。
「夕熾さん!これ!!」
立ち止まっていた私に気づき、戻って来た夕熾さんも手元を覗き込んできますが、顔が近くて恥ずかしいなんて思う余裕もありませんでした。
そしてそれは夕熾さんも同じだったのです。




