或るコドクな少女の独白
彼女は独りだった。
一人暮らしだった
友人がいなかった。
コドクだった。
彼女は今日も登校する。
登下校に会話する友人も持たず。
他の人からはクールビューティだと思われ。
だが実際はコドクなだけで。
彼女は告白されたこともあった。
だが彼女はそれを断った。
何度も彼女は告白された。
だがそれらすべては断られた。
なぜなら彼女はコドクだったからだ。
彼女は過ごしていく。
平凡な日々を。
いつも通りの毎日を。
何一つ変わらぬ日々を。
コドクなままの毎日を。
コドクなまま生きていく。
彼女の日々はいつもいつも通りだ。
彼女は時々過去を思い浮かべる。
彼女の過去に何があったかを知る者はもう彼女以外いない。
なぜなら彼女はコドクだからだ。
彼女には両親はもとより身寄りさえもいない。
彼女は一人で暮らしている。
時々過去を思い出しながら。
一生この記憶は忘れることが出来ないだろうと思いながら。
彼女は辛い過去を背負って暮らしている。
だがもうそれを知る者は彼女ただ一人。
それが今尚続いているのを知っているのも彼女ただ一人。
彼女は友人も親しい人も作ろうとはしない。
いつも必要最低限のことだけ。
彼女は大事なものを作ることを避けているかのようだった。
彼女は過去を思い浮かべる。
今も彼女の枷となるあの過去を。
とても幼かったあの時の彼女は放置された。
同じくらいの子供達と一緒に閉じ込められて。
やがて皆が空腹を訴え始める。
だが食べ物が来る気配はなし。
泣き叫ぶ者も現れた。
だが待てども待てども食べ物は出てくることはなかった。
そしてそんな中ある少年が小振りのナイフを見つけた。
彼はそれを隠しておいた。
だが彼はついに空腹で狂乱した。
ナイフを振り回す彼を必死で止めようとする皆。
最終的に彼含む数人の犠牲でこの事態は静まった。
そして誰かが「ソレ」を口に運ぶ。
なぜならそれ以外何も食べ物がなかったからだ。
…そこから先はもはや泥沼だった。
昨日まで談笑していた二人も片方が寝ている間にもう一人が首を締め殺しそれを貪った。
所詮幼子。
脱出の手だてなど思いつくはずもなく。
弱い者、それからソレを食べるのに抵抗のある者から狩られていった。
まさにそこは生と死が隣り合わせのセカイだった。
狩人さえもいつ自らが獲物となるかわからない。
そんな中で生き残るのは至難の技だった。
だが彼女は生き残った。
身体中に糧となった彼らの怨嗟の声を纏わせながら。
怨霊の恨み言に鼓膜が震わせられる。
彼女はコドクだ。
蠱毒だったのだ。
結局救い出されて使われることがなくなったとはいえ。
それからの日々。
彼女は他人に馴染もうとした。
皆と仲良くしようとした。
だが、彼女に憑く怨霊がそれを赦さない。
事故にあった。
不幸な出来事が起こった。
だんだん人々は彼女の元から離れていった。
彼女は悲しんだ。
だがそのうち何も感じなくなった。
そのことについて考えないようにしたのだ。
この怨嗟の声は彼女と仲がいい人にしか危害を及ぼさない。
所詮は彼女に対する恨みだけなのだから。
自分たちを踏み台にして生き残った彼女が恨めしく、妬ましく、そして羨ましいのだ。
彼女はもう他人の悲しむ姿を見たくなかった。
蠱毒だったとはいえ土台は少女「だった」のだ。
人並みの心は持ち合わせていた。
だがそれが今も正気であるかどうかまではわからないが。
そして彼女は避け始めた。
孤独になろうとした。
噂が広がっていたのだろうか。
容易く彼女は孤独になれた。
そして彼女は孤独に慣れた。
彼女はコドクだ。
蠱毒で孤独に暮らしていく。
彼女はそれを受け入れた。
彼女の暮らしは変わらない。
ずっとこのまま生きていく。
コドクの声を聞きながら。
コドクに独りで暮らしながら。
彼女はコドクだ。
彼女はコドクなのだ。
そして彼女はコドクだろう。
ずっと。
これからも。