揺り篭の夢
掲載日:2012/05/24
僕の中には、小さな小さな妖精がいる。悪魔が僕の中に植え付けた卵から孵った、小さな命だ。
彼女は僕の体を少しずつ食べて大きくなっていく。少しずつ、僕は少なくなっていく。
でも、少しずつ、僕は彼女で満たされていく。いつか彼女が僕の中いっぱいに満ちて納まりきらなくなったとき、彼女は僕の皮を食い破って美しい羽を広げ、飛び立って行くのだろう。
僕がその姿を見ることは叶わないけれど、きっと彼女は、僕に彼女を与えた悪魔のように透き通った羽を持ち、天へ駆け上がっていくのだろう。
僕は夢を見る。彼女の糧として生きながら、いつかこの身を食い破って天へ駆け登っていく妖精の姿を夢に見る。
……それは僕の中で眠る彼女を守る、揺り篭の夢。




