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今更な説明


店内は結構……じゃない。かなり広い。とんでもなく広い。

デパート?ショッピングモールだって言われた方がしっくりくるよ。

その二つの違いなんて細かいことはよくわかってないんだけど。

何回まであるんだろ…目測四階。地下もあるのかな?

入り口は自動ドア。足を踏み入れて一番最初はエントランスホールとでも言えばいいのか。

エスカレーターに階段、それに奥や右手側には別のフロアに通じているらしい通路。

照明が見当たらないのだが、光は差し込んでいる。外から光が来るようにされてるのかな?


「それではどうぞごゆっくりお買い物を楽しんでくださいねー」

「買い物?ていうかそもそもここがどこかだとかの説明、一切されてないんですけど」

「あ、失礼いたしました。ボケでしょうか物忘れが酷いんです」

「あ、ワザとじゃなかったんですかよかった」


でもボケるような年齢じゃないでしょお姉さん。

見た目確実に二十代だもの。

これで実は八十超えてるとか言われたら世の中の女性は泣くと思うよ?

……あ、ここ天国なんだっけ?だったら世の中とはいえないのかな…


「これでも三桁いってるんですよ?」


三ケタ……え?年齢の話?


「でも女性が軽々しく年を話すのもどうかと思うので、詳細は後日!」

「後日話すの!?ていうか!さっきも似たようなこと言ったけど心の声と対話しないでください!」

「では説明参りますね」

「……はいお願いします」


やめた。ツッコンでもスルーされるだけだと思う。

それにこれ以上説明を先延ばしにされたくない。

賢い判断だと自画自賛してもいいかな?多分きっと恐らく間違ってはないと思うんだ。


「お客様は魂魄というものをご存知ですか?」

たましいのこと?」

こんは所謂、核です。そして今重要なのははくのほうになります」


なんだか唐突だ。でもこれが説明なんだろう。

だってわざわざパネルを取り出して説明してるから。なくても多分大丈夫だけど。そこまで馬鹿じゃないですよ。

でも以外かな?てっきり魂魄でたましいのことかと思ってたんだけど。

でもたましいで魂って書くし、そうなのか。


「魂が核ならこちらは……そうですね、徳とでも言っておきましょう。わかりやすく言いますとお金みたいなものです」

「みたいなって……賢いわけじゃないので例えてもらった方が楽ですけど」

はくは最初、つまりどこかの現世に生を受けた時点で千です。そこから死ぬまで[千-悪行+善行=]で増減します。

そして死後、このデパートで魄で買い物をしてから転生できるのです」


なるほどお金ってそういうことか。本当の意味での徳、財産なわけね。

良い事をすれば追加されるけど、そうじゃないなら引かれる、か。

でも死んでから買い物してどうしろっていうのやら。

その疑問はすぐに解消された。まるで心を読んだようなタイミングで。まさかとは既に思えない。


「とはいえ死んだ魂に物を売るなんて意がない。なのでこの店で売っているのは物ではありません。

簡単にいいますとこのデパートでは能力、スキルとでも言うべきものを売っております。

お客様が売ることもできるので、売買していますが正しいでしょうか」

「才能の売り買い……ってことは、無能だと評される人は何も購入してなかったってこと?」

「いえ、自由に購入できるほど魄が残ってる方って中々いらっしゃらないので。そういう人の場合は最低限の事と、加えて特技を一つランダムで真っ白になった魂に書き込むんですよ」

「じゃあ人間誰しも一つは特技があるって本当なんだ」

「いえ、特技を決めるスロットにも白紙なんかはありますよ?最低限の諸々を決めるスロットはそこそこだとかが多いですし」


へー人間の才能の有無ってスロットで決められてるんだー。

人間生まれる前からギャンブルってこと?笑えなーい!…いや、本当に。


「まあそのギャンブルに必要な運の生産率は魂の素質に強く影響されるんですけど。スロットってのは例えですよ?」

「……閉心術ってないですかね」


完全に本物の読心術使いだよね?この人。


「それでですねー、重要な事をお話するのを忘れてました」

「はいはい、なんでしょうか?」

「お客様の魄残高ですけど―――」


懐から取り出した手帳らしきものを確認しだす。

ああ、確かに財布の中身知らないのに買い物とかないでしょうね。

ここにいるってことは、買い物できる程度はあるんだろうけど……。


「二千魄ピッタリとなっております」

「随分キリがいいね。まあ使うからあんまり関係ないけど。多いのかも分からないし」

「多いほうですよ?かなり!それに、お客様……非常に面白い人生を送ってきたようですね」

「面白い人生?」


言われて人生を振り返ってみる。……心当たりがなさ過ぎてびっくりだよ。

名家でもないし有力者でもない平凡な家庭に生まれた。

父は中小企業のサラリーマンで、母は専業主婦。

家庭内暴力もネグレイトも両親の浮気発覚でバイオレンスな事態が発生したこともない。

頭の出来は良くも悪くもない。テストの点数も得意な教科、苦手な教科があって平均は普通。

運動能力もスポーツで活躍できる程じゃないけど、目立つ程酷くもない程度。

その他色々と考えてみたけど普通だ。考え方はちょっと捻くれているらしいが……友人曰く。


「私、普通の人生送ってきたと思いますよ?」

「ええ、普通ですね。何の面白みもない、目立つところも欠けたところもない普通の人生です!」

「……なら、どこが面白いって言うんですか」


これもお姉さんの天然(?)なんだろうか。

さっきからずっとそうだけど、たった今更に分からなくなった。

ついでに人の人生を普通だ普通だと連呼しないで頂きたい。

自覚はあるけど言われて楽しいものでもない。悲しくもならないけど。


「どこが面白いなんて、そんなの……さっきから連呼してるじゃないですか」

「……はい?」


脳内に浮かぶクエスチョンマーク。

まったく。誰かこの人と円滑に話しを進める術を教えてください。


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