小田急便の配達
「ーよいしょ」
小田は荷物を車に積み込むとドアを閉める。
彼の職業は宅急便であり、これから客に荷物を届けるところだった。
「よし、行くか」
エンジンをかけ、ハンドルを持つ。、8月に入り、さすがに暑くなってきたので、エアコンをつける。
涼しい空気の流れに、小田は満足する、太陽がいくら暑さを押しつけようとしても、無視するのだった。
「まずはあの家か」
配達先のルートは頭に入っており、家へ向かう。
2階建ての家であり、大きく感じられる。
小田はエンジンを止めると、荷物を取り出す。
名前で探すと、すぐに見つかり、大きな包み紙だった。
ーお中元かな?
小田はそう想像すると、少し重たい荷物を運ぶ。
チャイム鳴らすと、「はーい」と声がする。
「どなたでしょうか?」
ドアホン越しの会話に、小田は丁寧に答える。
「小田急便です。お荷物を届けに来ました」
「荷物!! ハンコを用意しなくちゃ」
バタバタと中から聞こえてきて、小田は大丈夫かと待つ。
すぐにドアが開かれ、20代くらいの女性が出てくる。
ー俺と年が変わらない気がする。
そう思いつつ、荷物を差し出す。
「ここの住所と名前で合ってますか?」
「…はい、大丈夫です」
女性は素早く目を走らせ、確認すると、ハンコを取り出す。
「ここにお願いします」
指示すると、女性は抵抗なく、ハンコを押してくれる。
「重たいですので、気をつけて」
1言告げて渡すと、女性は表情を崩す。
「確かに重たいわね…。中に何が入っているのかしら?」
独り言を告げると、女性は頭を下げてくる。
「ありがとうございました、お疲れ様です」
「はい!! では失礼いたします」
小田はドアを閉めると、もわっとした空気に襲われる。息をさせないようにするつもりか、「太陽の奴」と独りごちる。
小田は颯爽と車に乗り込むと、涼しい風を感じ、生き返る。
「次の家は…」と確認する。
「…ああ、あそこの家か」
あまり乗り気ではなかった。ああだ、こうだ、とうるさい家で、早く済ませてしまおうと決める。
「なるべく怒らせないようにしよう」
車を走らせると、アクセルを少し強めに踏む。
早く済ませたかったので、急いでいた。
「あ、着いた」
あっという間に着いてしまい、小田は表情に気をつける。
荷物を取り出すと、お茶のようだった。
ーよし行くぞ。
覚悟を決めると、家のチャイムを鳴らす。
すぐに反応があり、「どうぞ」と声がかかる。
「失礼いたします。宅急便です」
そう言って中に入ると、いつもは頑固そうな男性が出てくるのに、今日は70代くらいの女性だった。
「住所と名前を確認してください」
「はい」
奥さんなのか素直で、小田は少し肩透かしを食らう。
人間が違うと、気持ちも違うのだなと思い知る。
ー一方的に決めつけては駄目だな。
自分の悪い癖を反省し、奥さんがハンコを押すのを凝視する。
「はい、ありがとうございます」
荷物を渡すと、奥さんは丁寧に頭を下げてくる。
「どうもありがとうございました」
「いいえ。またよろしくお願いいたします」
「ーちょっと待て」
奥から主人が出てきて、小田はぎょっとする。
無事に終わると思っていただけに、緊張し始める。
「あの…?」
「これでも持っていけ」
差し出されたのは、茹でたとうもろこしだった。
小田は戸惑う。しかし主人は強引に押しつけると、
「早めに食え。俺の家のとうもろこしだから」
そう言って去って行った。
意外な展開に、小田は反省する。
ー人は深く付き合ってみないと、分からないな。
怖い人だと思っていたが、とうもろこしを渡され、気分が上昇する。
奥さんも主人が去った方向を見、
「うちの主人、強引でしょう? 申し訳ありません」
謝ってきたので、小田は手を振る。
「いいえ。あの、とうもろこし、ありがとうございます」
お礼を言うと、家を後にする。
運転席に座ると、とうもろこしを一口、齧ってみる。
「…うわ、美味っ!!」
頑固親父の作ったとうもろこしは、性格に反して、甘くて柔らかかった。
意外な一面を知り、これからは決めつけないようにしようと誓い、家を後にするのだった。




