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第5話

 それから数日、お互いに気まずい日々が続いていた。


 学校での会話も、屋敷での会話も必要最低限。業務連絡のような会話だけ。


 傍から見れば、関係性が悪化したように思えるだろう。もちろん、私もこの状況を良くは思っていない。

 

 それでも、あの日のことは忘れられなかった。


 黄金色の空の下、手を繋いで帰ったあの日を。時々、その余韻に浸るように、左手を見つめてしまう。


 学校から帰宅し、今は二十四時過ぎ。私は次の定期テストに向けて、勉強していた。

 

 そろそろ、休憩しようかと考えていた時、ドアがノックされる。私が「入っていいよ」、というと、扉が開かれた。


 メイド服を着た月成が入ってきて、トレイを持っている。


 私の元まで歩いてきて、トレイから丸型のマグカップを机に置く。白を基調としていて、体を丸めている猫のデザインが施されている。


 決して高価なものではないが、中学生の時の修学旅行で、月成とお揃いのものを買った宝物だ。


 そういえば、あれ以来月成と出かけることも、遊びに行くこともなかったな。


 「その、いつもありがとね。月成」


 「い、いえ。仕事ですから、当然です」


 しばし、無言の時間が流れる。ペンを握ったまま、動けずにいた。

 

 月成は逃げ出すようにして言う。


 「そ、それでは……その、頑張ってください。


 失礼します」


 扉が閉まる音と共に、私は机に突っ伏す。なんだか、手元が寂しくなり、マグカップに手を伸ばした。


 ジャスミンのような華やかな香りが、鼻先をあおる。

 コーヒーが苦手な私のために、月成は苦味の少ない浅煎りにしてくれていた。


 一口啜れば、軽やかな口当たりで、柑橘系やベリーのような酸味に迎えられる。まるで、紅茶でも飲んでいるようだった。

 

 気持ちを切り替え、ペンを握ろうとするが、どうにもその気になれない。

 

 私はベッドに寝転がりながら、スマホの画面を眺める。

 そういえば、月成との連絡する時以外は、あまり使っていなかったなと思った。


 ネットで、「友達 接し方」と文字を打つが、すぐに消す。


 もちろん、恥ずかしさもあるが、それよりも、大切な人との関わり方を、ネットで検索する行為が許せなかった。


 ベッドから起き上がり、窓を開く。


 外は、すっかりと色を失い、孤独を感じる景色が広がっている。

 会おうと思えば、すぐに会えた。


 だけど、どうしてもそのための一歩が踏み出せない。


 月成は今、何を考えているのだろう。私のことを考えているのかな。


 願望に近い想像をしてしまう。


 ともかく、明日こそ話しかけて、この微妙な関係を終わらせる。

 そう心に誓い、ベッドに潜り込む。


 私の意識は、外の景色と同じような、色のない闇へと沈んでいった。


 

 いつも通りのルーティンで目を覚ます。月成は、私が起床したのを確認すると、そそくさと部屋から出ていってしまった。


 半分だけ開いた目で、どうにか洗面所を目指す。勢いよく流れ出る水を、バシャリと顔にかける。


 その最中も、いつ月成に話しかけるか、どんな会話をしたらいいかを考えていた。

 私がこんなことを考える日が来るなんて、思っても見なかった。


 他の人と話す時は、こんなことを考えない。気の向いた時に、好きな話だったり状況にあった話をするだろう。

 なのに、相手が月成になると、なぜか違った。


 水をかけている顔が、熱を帯びる。


 何なんだろうこの気持ち。不思議に感じているが、その感情を押し殺した。

 きっと、令嬢としてのプライドが、邪魔をしたのだろう。

 大切で、未熟なプライドが。


 洗顔ついでに、美容も終えると、食堂へ向かった。癖になっている、伸びをしながら食堂に入る。

 

 「雛……乃。もう少し、あの……お行儀よく」


 なんともよそよそしい態度で、月成は私を迎えた。


 今までは、完璧に従者として勤めてきた月成が、いきなり友達として接するのは難しいはずだ。

 私から、距離を縮めていくしかない。


 「大目に見てよー、月成。ね?」


 手を合わせて、冗談めかしに言った。


 「あ……う。えーとっ……」


 月成は、フリーズしたように動かなくなった。


 私が、月成の横腹を人差し指で突いても、一切反応を示さない。


 一体、どうしたものか。対等な関係を築くのは、本当に難しいものだ。本当に。


 一緒に登校しようと思っていたが、それは叶わなかった。


 いつもは、内職しているか真剣に聞いている授業。今日に限っては、どちらをする気力が湧かない。

 授業中の大半をゲームに割いている、凪佐。意外にも、人の変化に敏感らしく、直球に聞いてきた。


 「どったの? 何かあったっと? 暗い顔して」


 「なにその方言? それに、今授業中なんですけど」


 「学校の授業と、雛乃の悩みごと。

 どっちが大切かなんて、一目瞭然だろ!」


 「それが言える男子が、一切モテないのって、もはや天賦の才だよね」


 凪佐は、泣き真似のような仕種をして、悲しんでいる。

 私が、平謝りすると、すぐに止めたが。


 「それで、実際にどうなの?」


 どうやって伝えればいいのか。さすがに、月成の名前を出したり、事細かに説明するのも良くないと思うし。

 かといって、説明しなさすぎるのも、凪佐に失礼。


 この問題は、私と月成が解決する問題。アドバイスや、解決策が欲しいわけでもないので、うっすら伝えることにしよう。


 「まあ、ちょっと交友関係でね……」


 「そっかー、雛乃ぐらいのお嬢様っていうか、令嬢様になると大変そうだよね」


 やはり、凪佐は鋭い。

 学力と、その人の本質的な賢さは比例しないのか。


 私は、愛想笑いで、会話を中断した。


 どうしたらいいのか。口約束の友達じゃない。真に、友達になるには。


 その時、画期的な方法が思いついた。普通の人にとっては、当たり前のこと。だけど、私と月成にとっては、あり得ないことだ。


 帰りのホームルームが終わると、即座に月成のもとに向かい、両肩を掴む。


 「ねえ! 今から遊びに行かない?」

「面白かった!」








「続きが気になる、読みたい!」








「今後どうなるのっ……!」








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