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庵の食卓—笑顔をつなぐ香り

庵の台所。

薪のはぜる音、香ばしい匂いが立ち上る。

「ジーク、そこの野菜ちゃんと洗って!」

「分かってるって!」

「アルト様、包丁はお任せしていいですか?」

「……ああ。庖丁を握るのは慣れてないが、やってみる」

「アマネ、火の加減お願い!」

「うん! 任せて!」

ミナの指示が飛ぶたび、皆が慌ただしく動く。

普段は戦いの場でしか息を合わせない仲間たちが、今は一つの食卓のために力を合わせていた。

「すごいな……学園の錬金術師が、こんなに料理上手だとは」

カイルが感嘆する。

「効率を考えたら、自然と工夫するのよ」ミナは胸を張った。

「鍋の熱伝導率、調味料の配合、全部“計算”だから!」

「……でも」アマネが微笑む。

「計算だけじゃなくて、ミナが楽しそうだから、美味しくなるんだと思う」

その言葉に、ミナは一瞬ぽかんとしたが、すぐに顔を赤らめた。

「ば、ばか……そんなこと言っても、量は減らさないからね!」

やがて、食卓に並んだ料理は、彩り豊かなものだった。

香草を効かせたスープ、香ばしく焼き上げた肉、畑で採れた野菜のサラダ。

どれも庵の素朴な恵みを活かした品々だ。

「いただきます!」

一斉に声を揃えて、食事が始まる。

ジークは豪快に肉を頬張り、「うめぇ!」と声を上げる。

リュシアは「……本当に、美味しい」と小さな笑みを浮かべる。

アルトは黙って味わい、カイルは「塩加減が絶妙だ」と素直に褒めた。

アマネは口いっぱいに頬張って「幸せ……!」と呟く。

セレスとアサヒもその光景を静かに見守り、時折笑みを交わした。

「……いいわね」セレスがぽつりと呟く。

「こうして皆で食卓を囲むだけで、何よりも力になる」

アサヒが頷き、カグヤが足元でふわりと尻尾を揺らす。

庵の食卓には、戦いの緊張も、役割の重圧もなかった。

ただ仲間と共にある温もりが、そこに広がっていた。

――その温もりこそが、彼らを次の試練へと導く支えとなるのだった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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