表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/471

発明と約束—途切れる声の向こうに

学園の女子寮。

夏休み前の片づけに追われながら、ミナは机の上で最後の部品をねじ込んでいた。

小さな金属の輪に宝石を埋め込み、魔力を込めると――かすかに青い光が点滅する。

「よしっ……! これで、なんとか」

懐中時計ほどの大きさの装置。

通信機――彼女の最新の発明だった。

「……やっぱり、庵に行きたい」

誰もいない部屋で小さく呟く。

けれど、その思いを縛るのは家から届いた書状だった。

“婚約の話が進んでいる”――父の筆で綴られた文字が、胸を重くする。

「婚約者なんて……勝手に決めないでよ」

握った拳が震える。

その夜。

ミナは通信装置を手に取り、魔力を込めてみた。

「……ジーク? 聞こえる?」

――ジ……ジ……ガガッ……。

しばしの雑音のあと、ぶっきらぼうな声が返ってきた。

『……おい……なんだ、これ……耳が……キーンって……!』

思わず笑いが漏れる。

「やっぱり通じた! これ、私の新しい発明なの!」

『はぁ!? ……また俺で実験かよ! 休ませろっての!』

途切れ途切れの声。

でも、それでもミナは言葉を続けた。

「……ねぇ、ジーク。私、庵に行きたいんだ。みんなと一緒に……」

しばしの沈黙。

そして、雑音の奥から投げつけるような声が届いた。

『なら、行け! 誰がなんて言おうと、お前のやりたいことやれ!』

一瞬、胸の奥が熱くなる。

「……ありがと。やっぱり、あなたに言ってよかった」

ミナは装置を胸に抱きしめた。

通信はすぐに途切れたけれど、その短い言葉が十分だった。

翌朝。

荷物をまとめるミナの顔は、昨日よりずっと明るかった。

婚約の重圧は消えていない。

けれど――彼女には、支えてくれる仲間がいる。

(庵で、ちゃんと自分を見つけるんだ……)

夏の陽射しが窓から差し込み、彼女の決意を照らしていた。


読了感謝!いけるところまで連続投稿でお届けします(不定期・毎日目標)。

よければブクマ&感想お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ