表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/471

夏休みの約束—庵への道標

学院講堂に鐘の音が響いた。

壇上に立つエジル学園長の声が、終業式の締めくくりを告げる。

「以上をもって、一学期を終える。……各々、安全で実りある休暇を過ごすように」

一斉に拍手が広がり、張り詰めていた空気が解けていく。

重苦しい戦いの日々のあとに訪れた“夏休み”――その響きは、生徒たちの胸を軽くした。

式のあと。

中庭の木陰に腰を下ろした六人は、ひとときの涼風を浴びながら話し合っていた。

「いやぁ、やっと休みだな!」ジークが豪快に腕を伸ばす。

「休みといっても、どう過ごすかが問題です」カイルは眼鏡を押し上げ、相変わらず冷静だ。

少し間を置き、リュシアが小さく口を開いた。

「……私は。ルシアンさんやアサヒさんに、もう一度お会いしたいです」

その言葉に、アマネがぱっと顔を上げる。

「はいっ! わたしも戻りたいです。……庵は、わたしの“帰る場所”ですから」

無邪気な笑顔は、夏の日差しよりもまぶしくて――自然に皆の胸へ染み込んだ。

「庵か! いいじゃん!」ミナが目を輝かせる。

「私も行きたい! 美味しいもの食べられそうだし!」

「結局そこか」ジークが呆れながらも笑う。

「……でも悪くねぇな。鍛錬にもなるし」

「学園以上の学びが、庵にはありそうだ」カイルも小さく同意する。

やがて、皆の視線はアルトへ集まった。

彼は少し戸惑い、けれど真っ直ぐに答える。

「……俺も行きたい。ルシアンさんに伝えたいんだ。

勇者かどうかじゃなく、仲間と歩むって――その答えを見つけたことを」

その言葉に、仲間たちの表情がやわらいだ。

「決まりですね、アルト様!」アマネが嬉しそうに笑った。

「夏休みは、庵で合宿です!」

夏風が中庭を抜け、木々を揺らす。

笑い合いながら歩き出す六人の影は、まだ幼い。

けれど確かに、互いの影と重なり合いながら、少しずつ大きくなっていく。

――それぞれの答えを抱え、彼らの夏は始まろうとしていた。


読了感謝!いけるところまで連続投稿でお届けします(不定期・毎日目標)。

よければブクマ&感想お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ