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幕間:王の憂い—夏の陽に潜む影
※この回は章間の幕間です(本編は次話から)。
王都、王城の玉座の間。
執務机に並ぶのは、隣国から届いた外交文書。
「国境の交易路に兵を置いた、だと……?」
アルフォンス王が低く呟く。
平和を謳う文面の裏で、隣国は着実に力を誇示していた。
「陛下、過剰に反応すべきではありません」
そう口を開いたのは宰相ヴァレンティス。
穏やかな微笑の奥に、鋭い光が潜んでいる。
「……しかし、国境を揺るがすことは戦の火種になりかねん」
「だからこそ、“英雄”が必要なのです」
ヴァレンティスはことさらにゆっくりと告げる。
「国の未来を導く器……アルト殿下が、その旗印になられるでしょう」
アルフォンスの胸に、わずかな翳りが走る。
息子の未来を思い、父としての不安を押し隠す。
だが宰相の言葉を真に受けるわけにもいかない。
「……陛下」
去り際に、ヴァレンティスが囁いた。
「隣国の影を恐れるより、国内に眠る“力”に備えるべきかと」
玉座に残された王の耳に、扉が閉まる音だけが響いた。
夏の陽光が差し込む中で、陰は着実に広がっていく。
――そしてそのころ学園では、「夏休みだ!」と仲間たちの声が弾んでいた。
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