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戦後の静寂と残る暗雲

崩れた石畳、割れた柱。

学院の広場は瓦礫と焦げ跡に覆われていた。

結界が消えたことで、教師たちと奏の会が駆け込んでくる。

負傷者の手当て、倒壊を防ぐ魔法、残党の影を追い払う光。

その中で、真っ先に目に飛び込んだのは――立ち尽くすアルトの姿だった。

「……アルト殿下だ!」

「勇者殿下が学院を救った!」

歓声が波のように広がり、生徒たちの顔に安堵が戻っていく。

リュシアは目元を拭いながら、小さく呟いた。

「……やっぱり、勇者様……」

恋心ではなく、祈りに似た響きだった。

ジークが豪快に肩を叩き、ミナが「やったじゃん!」と笑い、カイルも黙って頷く。

仲間たちもまた、アルトを讃えていた。

だがその少し離れた瓦礫の影で――アマネはしゃがみこんでいた。

崩れた石片の下、赤黒くひび割れた“核”の残骸。

その中心に、鮮明な刀傷が走っていた。

「……私?」

小さく漏れた声は、誰にも届かない。

「アマネ!」

ミナが呼ぶ声に振り向いたとき、思考は流れていった。

刀を握る手に、まだかすかな震えが残っていることに気づきながら。

夜明けの光が学院に差し込む。

生徒たちは勇者の勝利を祝う。

だが、空の高みにふと――黒い靄がわずかに揺らめいた。

それはすぐに霧散し、誰も気づかない。

ただ一つの暗示だけを残して。

――悪魔の影は、まだ消えてはいない。


お読みいただきありがとうございます。

いけるところまで連続投稿! 準備でき次第どんどん載せます(更新は不定期ですが毎日目標)。

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