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呼び戻しの声

※軽度の戦闘・流血描写あり(R15想定の範囲)。


黒い結界の中心。

紅に染まった瞳を宿すラインハルトが、静かに立ち尽くしていた。

その周囲には影狼、影蛇、影猿――そして上空には影竜が旋回し、瘴気を撒き散らしている。

アルトは剣を構えながら、息を荒げて叫んだ。

「ラインハルト! お前はこんな奴じゃないだろ!」

「……」

返事はなかった。ただ、紅い瞳が微かに揺らぐ。

「まだ、あなたの心は残っています!」

リュシアが祈るように声を重ねた。

「誰かを導く力は、縛るためじゃない……! あなたは――仲間を守れる人です!」

結界の空気が一瞬震えた。

ラインハルトの手が止まり、影狼たちの動きも鈍る。

「……俺は……」

少年の唇がかすかに震える。

その瞬間、希望が確かに見えた。

だが――

――導け。弱き心を縛れ。

――お前は選ばれた。依代として。

冷たい声が、頭蓋の奥に流れ込む。

宰相ヴァレンティスの響きとも、あるいは魔王の囁きともつかないその声は、氷の鎖となって心を締め付けた。

「……ああ。そうだ。俺は導く者だ」

瞳が再び紅く燃え上がる。

「っ……!」

アルトの叫びも、リュシアの祈りも、もう届かない。

影の地面が波打ち、次々と魔物が生み出されていく。

影狼の群れは倍に増え、影蛇が絡みつくように広がる。影竜の瘴気は結界をさらに黒く濁らせていった。

「結界が……硬化してる!」カイルが顔をしかめる。

「このままじゃ、外から誰も入れない!」

「……もう、声は届かないのか」

アルトの手が震えた。

胸を焦がすのは焦燥と、仲間を失う恐怖。

だが、まだ諦められない。

剣を握る手に力を込め、仲間と共に影の群れへと再び立ち向かう。

同じ頃。結界の外。

広場へ押し寄せる無数の魔物を、教師たちが必死に食い止めていた。

「前衛を崩すな!」

ガロウ教官が盾を構えて吠える。

「結界に魔力を吸われている……まずは外周を押さえろ!」

エジル学園長が冷静に指示を飛ばす。

「ちょっと! 男子諸君、赤面してる暇はないわよ!」

イレーネ助教の火炎魔法が奔り、群がる影獣を焼き払った。

だが、どれほど奮闘しても、中心部――結界の内側の六人へは届かない。

彼らの運命は、彼ら自身に委ねられていた。


お読みいただきありがとうございます。

いけるところまで連続投稿! 準備でき次第どんどん載せます(更新は不定期ですが毎日目標)。

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