幕間:舞踏会の余韻
◆ クラリス視点
舞踏会の後、人気の少ない回廊を歩きながら、クラリスは溜め息をついた。
煌めく光に包まれたアマネの姿――。
庶民の少女でありながら、あれほど自然に人を惹きつける存在感。
「やっぱり……エリシア様が目を留めた子。放っておけるはずがないわね」
胸の奥で、強い庇護欲が芽生えていた。
そして、ひとり踊るリュシアを見守るカイルの眼差しに、微かな変化を感じ取る。
(あの子も、やっと……役割ではなく、自分を見せ始めたのね)
仲間たちが少しずつ“個”として動き出すのを、クラリスは静かに喜んでいた。
◆ ユリウス視点
舞踏会の片隅、杯を持ちながら人々を観察していたユリウス。
父からは「庶民の娘を監視せよ」と命じられている。
だが――。
(……どうしてだ。目が離せない)
笑うアマネに群がる子供たち。
彼女を着飾らせて誇らしげに微笑むクラリス。
そして、自然と人を和ませるその“音色”のような存在感。
胸が締め付けられる。
これは命令でも義務でもない。
「ただの庶民」と決めつけてきた自分の視野の狭さを、突きつけられている気がした。
「……俺は、どうすればいい」
杯の中で赤い葡萄酒が揺れた。
その迷いは、彼を次なる選択へと導いていく。
華やかな夜が終わり、静寂が戻る学園。
だが、その胸に芽生えた想いと決意は、確かな灯火となって消えることはなかった。
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