舞踏会—きらびやかな夜①
王城の大広間。
数百もの燭台に火が灯され、シャンデリアがきらめき、床には磨き込まれた大理石が映り込む。
奏でられる楽団の旋律に合わせ、色とりどりの衣装をまとった貴族や学園生徒たちが集っていた。
「わあ……すごい」
アマネは目を丸くして、広間の華やかさに見入った。
庶民出の彼女には、まるで夢のような光景だ。
「ほら、胸を張って。今日は君が主役でもあるのだから」
クラリスがそっと彼女の背を押す。
その隣ではセリーヌが器用に化粧道具を片付けていた。
「リボンもドレスも似合ってるわ。ほら、鏡を見てごらん?」
アマネが恐る恐る鏡を覗き込むと――。
黒髪は美しく編み込まれ、ドレスは白を基調とした淡い青。
素朴さの中に清楚な気品が漂い、彼女自身も思わず頬を赤らめた。
「わ、私……こんな、似合ってないです」
「似合ってるわよ。とてもね」
クラリスの碧眼は、まるで慈しむ姉のように優しく輝いていた。
その時、アルトが一歩前に出る。
緊張を隠しきれない様子で、それでも勇気を振り絞った。
「アマネ……もしよければ、一曲……僕と」
「えっ!? わ、私なんかが……!」
アマネは慌てて両手を振る。視線は泳ぎ、頬は赤く染まっていた。
「君じゃなきゃ、だめなんだ」
アルトの低い声。
アマネの胸がどくんと跳ねる。
「……っ」
一瞬の沈黙ののち、彼女は小さく頷いた。
「……はい」
二人は手を取り、音楽に合わせて舞い始める。
ぎこちないが、互いの距離は少しずつ縮まっていった。
その横で――。
「よっしゃあ! 見ろ、俺たちのダンスを!」
ジークがミナの手を引き、勢いよく踊りの輪に飛び込んだ。
「わわっ!? 足、速すぎ! 体育祭じゃないんだから!」
「いいんだよ、楽しく踊りゃ!」
二人の豪快すぎるダンスは、いつしか会場の笑いを誘う。
「またやってる」「あれはあれで目立つな」と囁かれ、
本人たちはまるで気にせず回転していた。
「……ふふ」
リュシアは思わず口元をほころばせ、
「まったく、彼らしいですね」と呟いた。
きらめくシャンデリアの下で、
それぞれの想いが、まだ小さな芽として息づき始めていた。
お読みいただきありがとうございます。
いけるところまで連続投稿! 準備でき次第どんどん載せます(更新は不定期ですが毎日目標)。
面白かったらブクマ&感想で応援いただけると励みになります。




