幕間:学園祭・にぎやかな日
昼下がりの学園。
校庭や中庭は色とりどりの屋台で埋まり、生徒や来訪者たちの笑い声であふれていた。
香ばしい匂い、楽器の音、子どもたちのはしゃぎ声――。年に一度の祭りの空気だ。
「わあっ、見て見て! 焼き串に蜜菓子、あとパンケーキ!」
ミナが目を輝かせて両手いっぱいに食べ物を抱える。
「おい、待て! 財布は俺だぞ!」
ジークが慌てて追いかけ、財布を死守しようとする。
だが次の瞬間、ミナは笑顔で肉串を彼の口に突っ込んだ。
「はいっ、ジーク代! 美味しいでしょ?」
「……う、うまい! って違うだろ!?」
周囲の客から笑いが起き、二人はすっかり「名物屋台カップル」と化していた。
一方その隣では――。
力自慢のダリオが、屋台の支柱をぐらりと支えていた。
「おいおい、柱が傾いてるぞ!」
「うわあ、崩れる!」
瞬間、ダリオが両腕で木枠を抱え込み、豪快に持ち直す。
「よっ……と! 大丈夫だ、俺がいる!」
周囲から歓声があがる。
「すごい!」「英雄だ!」
拍手に照れ笑いを浮かべるダリオに、子供たちまで駆け寄った。
さらに少し離れた屋台では――。
「当たりはこのくじ引きの中に一枚! だが運だけじゃ勝てない、頭脳戦だぞ!」
トーマが声を張り上げ、庶民の子供たちを相手に「知略くじ引き屋」を切り盛りしていた。
「ただのくじでしょ?」
「ふふ、そう思ったら負けだ!」
説明されてもよくわからないルールに、子供たちは大喜びで群がる。
「さすが主席!」と感嘆の声が飛び交い、トーマは誇らしげに胸を張った。
その頃、セリーヌは商人らしい手際で屋台の金銭管理を整え、
「あの子、庶民っぽいのにすごく段取りいいわ」と評判を集めていた。
「こういうのはね、笑顔とお釣りの速さが命よ」
そう言ってにこやかに接客する姿は、リュシアやアマネにも新鮮に映る。
そして。
「えいっ!」
アマネは、庶民の子供たちと縄跳びをしていた。
黒髪が揺れ、笑顔が光に溶ける。
「お姉ちゃんすごーい!」
「もっとやって!」
無邪気な歓声に囲まれ、アマネは一瞬だけ照れくさそうに笑った。
その姿を見ていたクラリスは小さく頷き、
「――やっぱり、彼女には“人を惹きつける音”があるわね」と胸の奥で呟いた。
夕暮れ時、にぎやかな学園祭は灯籠の光に照らされ、まだまだ続いていく。
それは奏の会の面々が、初めて「仲間」として動いた一日だった。
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