保健室に射す光
午後の実技訓練のあと。
アマネは転倒して膝を擦りむき、リュシアに付き添われて保健室へとやってきた。
「……もう、アマネさん。無茶をしすぎです」
眉を寄せながら、リュシアが手を取る。
「えへへ……大丈夫だよ、ちょっと転んだだけだし」
アマネは照れ笑いを浮かべた。
白いローブ姿のセラフィーナが迎え、柔らかな声で言う。
「はいはい、お二人ともお疲れさま。勇者も聖女候補も……まだ十五の子供でしょう?」
アマネは頬を膨らませ、リュシアは言葉に詰まった。
消毒の薬草を取り出しながら、セラフィーナは静かに続けた。
「役割や肩書きは大人たちが勝手に与えるもの。でも、痛みを感じて泣いたり、笑ったりするのは――普通の子供の証よ」
リュシアはその言葉に、胸を突かれた。
(私は“聖女”としてでなく……アマネの友達として隣にいたい。けど……アルト様の隣に立ちたい気持ちも……)
頬が熱くなる。
セラフィーナはそんな彼女の視線の揺れを見抜いたように微笑む。
「友情も、恋も、選ぶのはあなた自身。どちらかを否定しなくてもいいのよ」
「……セラフィーナ先生……」
リュシアの瞳が潤む。
「さ、アマネ。これでおしまい。ほら、膝をもう一度見せて」
「は、はいっ」
セラフィーナの手は穏やかで、薬草の香りが保健室に漂った。
窓から差し込む陽光の下――
少女たちは、勇者や聖女ではなく“ただの自分”として、ほんの少し心をほどいていった。
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