星空の下の剣術夜間特訓
石畳の演習場に夜風が吹き抜ける。
月明かりに照らされた人影――それは剣を構えるアルトとジーク。
「もう少し腰を落とせ、アルト殿下」
静かな声で指導するのは、助教カミル。
銀灰色の髪が夜空に溶け込み、その中性的な横顔に見惚れる女子生徒の姿もちらほら。
「キャーッ! カミル先生、かっこいい……!」
「え、女の子みたいなのに、なんで剣振るとあんなに強いの!?」
演習場の隅で小声が飛び交う。
ジークは剣を振り下ろしながらぼやく。
「ったく……女子の黄色い声援までついてんのかよ」
「はは……先生、人気ですね」アルトが苦笑する。
カミルはそんな声を意にも介さず、淡々と指導を続けた。
「剣は力だけじゃない。呼吸と心――星を見上げるように、余計な力を抜け」
彼の指し示す夜空には、満天の星。
ジークもアルトも思わず見上げ、呼吸を整えた。
「……守るための剣は、力むな」
カミルの言葉に、アルトの胸が強く揺れる。
(守るための剣……僕は――)
剣を握る手に力を込める。
アルトはふと、自分の中の声を言葉にしていた。
「……僕は、勇者だから戦うんじゃない。仲間を守りたいから、剣を振るいたい」
ジークが横目で見て、にやりと笑う。
「よく言ったな、アルト。そういうのは嫌いじゃねぇ」
カミルもまた、口元をわずかに緩めた。
「なら、その意志を剣に乗せろ。それがお前の力になる」
――星空の下。
仲間を守る誓いと共に、少年の剣は確かにひとつの成長を刻んでいた。
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