響き合う絆—奏の会(後篇)
夕暮れ、学園の一室。
クラリスが根回しをして集めた数人の姿があった。
「クラリス先輩から聞いた時は驚いたけど……俺は賛成だ」
ユリウス・フォン・グランディールが口を開いた。
姿勢を正し、少し硬い表情。けれど視線はアマネに向いている。
「君を見ていると……不思議と納得させられるんだ。庶民だからじゃない、人として、だ」
アマネは「えっ」と目を丸くした。
クラリスは横で満足そうに微笑んでいる。
「俺も加わるぜ!」
豪快に腕を組むのはダリオ。
「この前の訓練で、必死に食らいついてたの見た。あんたの根性は本物だ」
セリーヌも手を挙げる。
「市場で“適正価格を払いたい”って言ってたでしょ? あれ、庶民目線で感動したの。私、応援したい」
トーマは眼鏡をくいっと押し上げ、やや気取った声で。
「授業で先生に臆せず答えていたのを覚えてる。庶民主席としても、君の真っ直ぐさは見習うべきだと思った」
アマネはしどろもどろで頭を下げる。
「え、えっと……ありがとうございます……!」
クラリスはそんな彼女の肩に手を置いた。
「だからこそ、形にするの。秘密の会合――“奏の会”」
それは大げさな宣言ではなく、ファンクラブのような空気をまとっていた。
けれど集まった者たちの瞳は真剣だった。
ユリウスは胸の内で呟く。
(……父の命令は“監視”だった。でも、俺が見つけたのは――守りたい仲間だ)
その思いは、誰にも聞こえない。
ただ静かに、新しい絆が結ばれていく音がした。
――こうして「奏の会」は発足した。
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