仲間の声—奏の会(前篇)
秋の午後。中庭の並木が金色に染まり、落ち葉が舞っていた。
アマネ・アルト・リュシアの三人はベンチに腰掛け、授業の合間のひとときを過ごしていた。
「……結局、勇者とか聖女とか言われても、よくわからないんです」
アマネが落ち葉を弄びながらぽつりとこぼす。
「私はただ、みんなと一緒にいたい。それで十分だって、思うから」
リュシアはその言葉に、少し頬を赤らめてうなずいた。
「私も……聖女としてじゃなくて、仲間でいたい。アマネさんや皆さんと」
アルトも静かに拳を握る。
「勇者の肩書きよりも、仲間を守る剣でありたい。……今は、そう思ってる」
三人の間に、言葉以上の共鳴が流れる。
そのとき、柔らかな声が割り込んだ。
「――その響き、形にしてみない?」
振り返れば、クラリス・フォン・エルヴァインが立っていた。
陽光を受けて輝くプラチナブロンド。微笑みは、どこか企みを含んでいる。
「音を重ねて、奏でるように。そんな集まりがあってもいいと思うの」
彼女はさらりと切り出した。
「奏の会」と。
「……奏?」
アマネは目を瞬かせる。
クラリスは小さく笑んで言った。
「協奏の“奏”よ。けれど――あなたの名にもぴったりでしょ、アマネ?」
頬がかあっと熱くなる。
「わ、私の……? え、えっと……!」
リュシアが小さく微笑む。
アルトは照れ隠しに咳払いした。
クラリスは優雅に立ち上がり、スカートの裾を整える。
「この学園で、響き合う仲間の会を――私と一緒に作らない?」
秋風が吹き抜ける中、アマネは戸惑いながらも頷いていた。
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