表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

432/471

復興の王都

夜を徹して工房で針を進める仲間たちの灯火の外では、王都がゆっくりと息を吹き返していた。

崩れた石垣は積み直され、割れた窓には新しい硝子がはめられ、通りには活気が戻りつつある。

瓦礫の山だった広場では子供たちが走り回り、露店が並び、香ばしい焼き菓子の匂いが漂っていた。

「勇者様が帰ってきてくださったからだ」

「聖女様がまた、私たちを導いてくれる」

噂は街角から街角へと流れ、笑顔が連鎖していく。

人々は英雄たちの存在を希望の灯火として、手を取り合い働いていた。

アマネとリュシアは、警護も付けずにその通りを歩いていた。

といっても、堅苦しい視察ではない。復興の手伝いをする子供に声をかけたり、井戸端で談笑する婦人たちに混ざったり――まるで昔からここに暮らす住人のように、自然に馴染んでいた。

「アマネ様!」「リュシア様!」

道すがら声をかけられ、感謝と敬愛の視線を浴びるたびに、二人は少し困ったように笑みを返す。

ある少年が木材を運ぶ手を止め、真っ直ぐにアマネを見上げた。

「本当に、勇者様や聖女様が戻ってきてくれてよかった。俺たち、もう大丈夫だって思えます」

その言葉に、アマネはそっとしゃがみ、少年と視線を合わせる。

「ねえ、よく覚えておいてほしいの。私たちは、ただ派手なことをしているだけ。国を支えているのは、ここで汗を流しているみんなの力なの。だから――私が特別なら、あなたも特別よ」

少年は目を丸くしたまま固まり、それから小さく頷いた。

その横でリュシアは、別の女性に手を握られ、頬を赤らめている。

「……わ、私はただ……役目を果たしているだけです。けれど……ありがとう」

それでも口元には柔らかな笑みが浮かび、握られた手を決して離さなかった。

夕暮れ、鐘の音が響く。

働き終えた人々が並んで空を見上げ、暮れゆく光の下で肩を寄せ合う。

アマネとリュシアもその輪の中に加わり、胸の奥に温かい確信を抱いた。

――英雄の存在が希望を灯し、民の力が国を築く。

その二つが揃ったとき、どんな闇も打ち払える。

復興の王都は、確かに未来へ歩き出していた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ