表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

431/471

夜明けを紡ぐ工房

工房の扉が閉じられると同時に、熱気と鉄の匂いが広がった。ブリューナが大槌を振るい、ファエリアが水晶を磨き、ミナが設計図を睨みつけながら手を動かす。工房は昼夜の区別を失い、ひたすらに火と光が踊る場所へと変わっていった。

「師匠ー! これ、ここで合ってますか?」

「だから私は師匠じゃないってば!」

竜人の少女セラフィオが、汗を額に浮かべながらミナに金属片を差し出す。翼の先がカタカタ震えており、不安そうな瞳がまっすぐに向けられていた。

ミナは一瞬言葉を詰まらせた。だがすぐに手を伸ばし、彼女の手元を優しく直す。「そう、もう少し角度をつけて……金属はね、こうすると呼吸するんだ」

「なるほど! 金属が……呼吸……!」

セラフィオの顔が輝いた。異文化の感性で捉えられる言葉が、工房の空気を一層鮮やかにする。

夜も更け、ギルド員たちが差し入れを運んでくる。ロイクが大鍋を担ぎ、ユウマとミオがパンやスープを並べ、レナが笑顔で「少しは休んでくださいね」と声をかけた。

「師匠は徹夜続きなんだから休ませて!」

セラフィオが小さな体でミナを庇うように立ちはだかる。その必死さに場が和み、ミナは耳まで赤くして「わ、私はまだ師匠じゃないってば!」と叫ぶ。だが、仲間たちの笑い声に押されるように、彼女の胸の奥に小さな誇りが芽生えていた。

「ミナ、だいぶ教えるのが板についてきたじゃないか」

ブリューナが目を細め、大槌を置いた。ファエリアも頷き、水晶の粒を光にかざす。「あなたはもう、学ぶだけの子じゃないわ。渡す側に立っているのよ」

その言葉に、ミナは一瞬手を止めた。火の粉が舞い、工房を照らす。セラフィオの一生懸命な姿と、師匠たちの温かい眼差し。そのすべてが、彼女の背中を押していた。

「……うん。私も、未来に繋げるんだ。最高の防具を作るために!」

夜明け前。窓の外に薄明が差し込み、工房の灯りと交わる。ブリューナ、ファエリア、ミナ、そしてセラフィオ。四人は火と水晶の輝きに包まれながら並び立ち、完成へと向かう決意を胸に刻む。

「絶対にやり遂げよう!」

工房の空気は熱く、それでいて清々しかった。最強の防具を求める旅路は、確かに次の段階へと進み始めていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ