女子サイズ測定
光糸を手にした若き冒険者たちが去り、工房に再び静けさが訪れた。ブリューナとファエリアは素材を慎重に仕分けながら、ちらりとミナに視線を送る。
「さて……設計に入る前に必要なことがあるわね」ファエリアの言葉に、アマネとリュシア、そしてエリスティアは小首を傾げた。
ミナは工具箱の中から布メジャーを取り出し、きゅっと引き伸ばした。「サイズ測定だよ! 防具はぴったりじゃないと意味ないからね!」
「えっ、今ここで!?」
アマネが慌てて声を上げ、リュシアも思わず一歩下がる。エリスティアに至っては「えっ……姫にこんなことを……!」と目を丸くしていた。
「大丈夫大丈夫! 学生時代はよくやってたじゃん!」ミナはどこか自慢げに胸を張る。「……まあ、一方的に私がやってただけなんだけど!」
アマネは額に手を当ててため息をついた。「……あったね、そんなこと。けどあの頃は子どもだったし!」
「そうそう、今は違うのよ……!」リュシアはそっぽを向きながらも耳まで真っ赤だ。
エリスティアはしどろもどろになりながら「は、初めてなんですけど!? 私にこんな経験……!」と抗議するが、ミナに「誰だって防具は必要でしょ!」と切り返されてしまい、観念したように頬を染めて肩を落とした。
◇
最初の犠牲者(?)はアマネだった。メジャーが胸元を滑ると「ちょ、ちょっと! くすぐったいって!」とジタバタ。ミナは「動かないで!」と真剣な声で制止するが、その顔は赤く火照っている。
次にリュシア。彼女は涼しい顔を装いながらも、首筋までほんのり色づいていた。「……仕方ないわね。防具のためだもの」しかし数値を読み上げられると「だ、だから声に出さなくていいってば!」と慌てて制止する。
そして最後はエリスティア。王宮育ちの彼女にとって、この状況は未知の体験だった。「ちょ、ちょっと待って……! わ、私、心の準備が……!」必死に抵抗するも、ミナが「これも国を守るため!」と力強く押し切り、ついに計測開始。真っ赤になった姫が「うう……こんなの初めて……」と涙目で呟く姿に、アマネとリュシアは思わず吹き出してしまった。
◇
計測が終わったミナはメジャーを抱きしめて感慨深げに呟いた。「……うそ、みんな成長してる……! 数字が全然違う!」
「ちょ、言わないで!」アマネとリュシアが同時に突っ込み、エリスティアは両手で顔を覆い隠す。工房には、恥ずかしさと笑いが入り混じった空気が満ちていった。
「若いっていいわね」ブリューナが柔らかく笑い、ファエリアも頷く。「本当に、未来を託せる世代だわ」
ミナは頬を赤く染めながらも、真剣な眼差しで拳を握った。「これで最高の防具を作れる! 必ずみんなを守ってみせる!」
「……もう、ミナったら」
アマネとリュシアは呆れたように苦笑し、エリスティアはまだ赤面を引きずりながらも小さく微笑んだ。こうして、工房にまた一つ、絆を深める思い出
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