ソレイユ復興と工房への道
激戦を終えたソレイユの街は、まだ煙と土埃の匂いが漂っていた。崩れ落ちた建物の瓦礫を片付ける音、負傷した人々の呻き声、そして子どもたちを慰める母親の優しい声が入り混じり、街全体が大きな息をしているようだった。
「よし、この梁をどけるぞ! せーの!」
ジークが声を張り上げると、兵士たちや街の若者が力を合わせ、倒壊した家屋の残骸を持ち上げた。その下から現れた老人が震える声で「ありがとう……」と呟くと、一斉に安堵の声が漏れる。
アルトは額の汗を拭いながら、子どもたちを安全な場所へ導いていた。「怖かったよな。でも、もう大丈夫だ。家は必ず建て直せるから」
彼の言葉に、泣きじゃくっていた子どもが小さく頷く。その姿に周囲の兵士たちも勇気づけられていた。
一方でレオンは、残った兵士たちを統率し、避難所の整備に奔走していた。指揮官としての冷静さを保ちながらも、その眼差しは常に民の安全を最優先にしている。彼の背中を見て、若い兵士たちも動きを止めることなく働き続けた。
◇
「資材を! 資材がもっと必要だ!」
現場で叫んだのはロイクだった。ギルドに所属する若き冒険者の一人で、仲間のレナやユウマ、ミオと共に、復興支援の物資調達に奔走していた。
ユウマは庵近くの村出身ということもあり、顔見知りの民に声をかけながら瓦礫の下から使える木材や布を集めている。「大丈夫です! こっちは任せてください!」
ミオは汗をかきながらも笑顔を絶やさず、壊れた屋根から瓦を降ろしていた。「次に来た時には、きっともっと明るい街になってるはず!」その言葉に、周囲の大人たちが驚きと感謝の入り混じった眼差しを向ける。若者の言葉がどれほど力になるかを、皆が改めて実感する瞬間だった。
◇
街の広場では、避難してきた人々に炊き出しが配られていた。兵士と市民が肩を並べ、互いを労い合いながら一杯のスープをすする。戦火に焼かれた街であっても、人々の心はまだ折れてはいない。むしろこの苦難が、結束を強めているように見えた。
◇
その日の午後。街の喧騒を背に、アマネ、リュシア、エリスティア、そしてミナの四人は王城を後にして歩いていた。向かう先は、郊外にある工房——鍛冶師ブリューナと水晶細工師ファエリアのもとだった。
「最強の防具を作るヒント……必ず掴んでみせる!」
ミナの瞳には、昨日までの無邪気さとは違う、強い決意が宿っていた。仲間たちを守るために、自分にしかできないことを果たそうとしているのだ。
「ほんと、ミナらしいね」アマネが横で笑った。
「ええ、技師の情熱ってやつね」リュシアも頷く。
エリスティアは小さな声で「……頼もしいです」と呟いた。その横顔は、どこか安堵に満ちていた。
四人を包む夕暮れの光は柔らかく、戦いの爪痕を残す街並みにも、少しずつ明日への希望を照らしていた。新たな旅路が、今まさに始まろうとしていた。
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