勇者と聖女を迎える場所
アマネとリュシアの背に、暁衣と宵衣がはためき、二人は光を纏いながら戦場から舞い上がった。太陽と月の加護を受けたその姿は、まるで天へ昇る双星のように眩しく、地に残る仲間たちの胸に強烈な想いを刻む。
「……行ったな」ジークが呟く。その拳は血に濡れながらも、力強く握り締められていた。
彼らの視線の先には、なおも立ちはだかる二体の巨影――バロルとモラクス。世界樹から溢れた魔力を吸収したその身は、傷が瞬時に塞がり、筋肉は異様な膨張を遂げている。地を踏み鳴らすたび、石畳が裂け、轟音が響き渡った。
「人間ごときが……ここまでやるとはな」バロルの声が低く唸る。だが、その口元には驚愕と苛立ちが滲んでいた。
「仕留め損ねたことを後悔させてやろう」モラクスの眼光が赤く輝き、空気が震える。
◇
「怖じ気づくな!」ジークが声を張り上げる。「俺たちがここを守り抜く! 勇者と聖女が帰還する場所、みんなが安心して暮らせう場所を、絶対に!」
「おうとも!」アルトが剣を掲げた。その刃には勇者から授けられた加護が宿り、眩い光が戦場を裂く。「アマネを……必ず迎える!」
「ならば俺もだ」カイルは杖を構え、片手で魔導書を開く。ページが風を巻き起こし、氷の結晶が舞い散る。「リュシアを迎える場所を……俺が作る!」
ダリオが大剣を肩に担ぎ、クラリスが弓弦を引き絞り、ユリウスが盾を構えて仲間たちを守る。三人の背には、同世代としての誇りと負けられない意志があった。
「ここで退いたら、俺たちの未来はない!」ダリオが叫ぶと、クラリスの矢が閃光のように飛び、ユリウスの盾が炎を弾いた。
その背後で、ガロウ先生とイレーネ先生が魔法陣を展開する。教師である彼らは、生徒たちを守る壁となりながら、同時に強烈な魔力を放って援護する。「お前たちの道は、俺たちが切り開いてやる!」
さらにロイク、ユウマ、ミオ、レナ――若きギルド員たちも続いた。恐怖を抱えながらも、彼らは武器を握る手を震わせず、仲間の背を追った。
◇
「勇者と聖女が帰還する場所を作る!」
その言葉が合言葉となり、全員の胸に炎が灯る。怒号と歓声が重なり合い、戦場は再び激闘の渦に飲み込まれた。
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