出撃の誓い
戦場の轟音の中、エリスティアは堪えきれずに声を上げた。
「私も行きます! 四天王を放ってはおけません!」
震える声に仲間たちが目を向ける。だが、その瞬間、アマネとリュシアが同時に手を伸ばし、彼女の肩を押さえた。
「エリスティア……」アマネの瞳は強い光を宿していた。「仇は必ず、私が討つ。だから、あなたはここを守って」
「そうよ」リュシアも微笑み、彼女の手を握った。「神樹を守り抜けるのは、あなただけ。だから、この地を……仲間を、お願い」
「……でも!」
涙を滲ませるエリスティアの声を、二人の真剣な眼差しが押し留める。その想いに、彼女は唇を噛み、ついに静かに頷いた。
◇
「レオン殿下」アマネが一歩進み出る。「私たちに出撃の許可を」
レオンの瞳が鋭く光った。戦場を統べる王族としての厳しさが、今そこにあった。
「……許すわけにはいかない。この地を離れれば、君たちの命は保証できない」
「それでも」リュシアの声は揺るがなかった。「行かなくてはならないのです。ソレイユを、皆を守るために」
沈黙。炎と氷の唸り声が戦場を震わせる中、レオンは静かに口を開いた。
「……ならば条件がある」
仲間たちの視線が一斉に集まる。レオンの声は低く、だが力強かった。
「必ず無事に帰還すること。命を最優先にすること。それを約束できるならば、私は君たちの出撃を許可する」
アマネとリュシアは同時に頷いた。その決意は揺るぎなかった。
◇
二人はエリスティアを見つめ、そしてレオンへと視線を向けた。
「エリスティアを……頼みます、レオン殿下」
思いがけぬ言葉に、レオンは一瞬驚いたように目を見開いた。だが、すぐに真剣な光を宿し、静かに応える。
「惚れた女性を守れないで、国が守れるか」
その言葉に、エリスティアの頬が一気に赤く染まった。心臓が激しく打ち、矢を落としそうになるほどに震えた。
「……私も……殿下を、お慕いしております……」
小さく、それでいて確かに届く声。レオンの表情がわずかに揺れ、しかしすぐに穏やかな笑みへと変わる。
そのやり取りを見届けたアマネとリュシアは、互いに微笑み合った。
「……二人のこれからを、ちゃんと見たいね」
「うん。そのためにも、必ず帰らなきゃ」
二人の決意がさらに強くなる。戦場の轟音の中、仲間たちの胸に「必ず生きて帰る」という誓いが深く刻まれた。
「レオン殿下」
二人は再び声を揃えた。「どうか、改めて四天王を討つ出撃の許可を!」
レオンの瞳は揺るがない。
そして――
「許可する。必ず、生きて帰ってこい」
「はい!」二人の声が重なり、戦場の喧騒を貫いた。
暁衣と宵衣が輝きを増し、光が二人を包み込む。太陽と月の加護が重なり合い、彼女たちの決意を照らすかのように。
「必ず……帰ってくる!」アマネが叫び。
「皆を守り抜いてみせる!」リュシアが続ける。
双子のように響く声。その宣言に仲間たちは胸を震わせ、戦場の空気が一変した。
――新たな戦いの幕が、今まさに上がろうとしていた。
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