暁衣と宵衣
アマネとリュシアの声が重なり、戦場に決意の響きが広がった。その瞬間、空気を震わせるようにして二つの影が現れる。
「……間に合ったか!」
息を切らしながら駆け込んできたのは、ブリューナとファエリアだった。戦場の熱気と冷気を物ともせず、二人の鍛冶師は両手に光を抱えている。その手から解き放たれたのは、織り成された二つの外套。
「アマネには――《暁衣》。太陽の加護を織り込んだ。ソル・イグニスと同調すれば、空路が開く」
「リュシアには――《宵衣》。月の守護を宿した。ルナ・セレーネと呼吸を合わせれば、夜空すら踏み石になる」
差し出された瞬間、外套の布地から柔らかな光が揺らめき立つ。暁衣は燃え立つような金のきらめきを放ち、宵衣は静かに蒼銀の光で包む。
「これは……!」アマネが息を呑む。纏うだけで、背に熱と光が宿るのを感じた。
「……温かい……」リュシアの肩にかけられた宵衣は、まるで母に抱かれるような安らぎを与える。
二人の瞳が、自然と涙に滲む。彼女たちの決意に、まるで精霊そのものが祝福を与えたかのようだった。
「行くんだろう?」ブリューナが短く問う。その声には一切の迷いがない。
「ええ。私たちが行かなくては」アマネが強く答える。
「仲間を信じて……この命、燃やす覚悟はできています」リュシアも凛とした声で続けた。
ブリューナとファエリアは、どこか誇らしげに頷いた。
「なら、仕上げは心が強いほど、外套は遠くまで飛ぶ」ファエリアの静かな言葉に、周囲の空気がふっと柔らぐ。
アマネとリュシアは互いに目を合わせ、小さく笑い合った。
――まずは、力をもらいに行こう。
二人は踵を返し、人波を縫って駆け出した。
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