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侵攻の火蓋—獣王と氷獄

王都ソレイユの空に、重苦しい轟音が響き渡った。地平の彼方から、黒い靄を纏った影が迫る。それは大地を揺るがす巨躯――四天王バロル。そして、その背後から吹き荒れる極寒の風が街の空気を凍りつかせる。氷獄の支配者、モラクスが進軍を開始していた。

「来たか……!」王城の塔上に立つレオンが、鋭い視線で前線を見据えた。兵たちは既に布陣を整え、市民は避難を完了させている。鐘の音が鳴り響き、戦の幕が上がった。

バロルが一声咆哮するや、大地が割れ、獣群が溢れ出す。狼、熊、牙を持つ異形の獣たちが王都の門へ突撃する。しかし、その瞬間――

「撃てぇぇっ!」

城壁上から矢の雨が降り注ぎ、火矢が闇を切り裂く。さらに広場から光の魔法陣が展開し、魔導士たちの一斉砲撃が獣群を薙ぎ払った。

「……ほう?」バロルの獣の瞳がぎらりと揺れる。王都の兵たちの抵抗が、思っていたよりも鋭い。彼は唇を歪めた。「人間ごときが、この我に抗うか」

一方、氷結の魔力をまとったモラクスが両腕を広げると、空から氷の礫が無数に降り注いだ。城門周辺が一瞬で凍りつき、兵たちが凍死しかける。しかし――

「風よ、護れ!」カイルが杖を掲げ、《祈聖書ルーメナス》を開いた。緑の風が渦巻き、氷嵐を吹き払う。さらに後方から矢が光を帯びて放たれる。

「精霊よ、導き給え!」エリスティアの放った魔力の矢が氷礫を粉砕し、モラクスの肩をかすめる。氷の巨体がわずかに後退し、その瞳が細められた。

「……人間の連携、侮れぬな」モラクスは低く呟いた。

「押し返せぇっ!」ジークが《轟斧ヴァルガルム》を振るい、迫る獣を一撃で吹き飛ばす。ミナは《魔導銃アルキメイア》を構え、雷弾を放って仲間の背を守る。

「ふふん、こっちだって負けてられないよ!」

兵たちも声を上げる。「王子殿下と勇士たちがいる! 勝てるぞ!」

その声は戦場全体を震わせ、兵たちの士気を押し上げた。四天王が率いる侵攻軍でさえ、押し返されていく――。

王城では、アマネとリュシアも結界の強化を行い、戦況を眺める。街の灯が消えぬよう、彼女たちも心を燃やしていた。

「……さすがだね、みんな」

「ええ。でも、これで終わるとは思えないわ」

「私たちも行こう!」

「誰1人欠けさてはならないわね!」

ふたりの瞳には、これから先の決戦を予感する光が宿っていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

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