夜語りの女子会
庵の一室。夜更けの灯りが柔らかく揺れ、湯上がりの香りがまだ漂っていた。部屋着に身を包んだ面々が集まり、布団を円形に敷き、枕を抱きながら笑い合っている。ここにいるのは、アマネ、リュシア、エリスティアの三人と、大人組――セレス(エリシア)、フローラ、アサヒ。年齢も立場も違うが、この時ばかりは女性同士の距離が縮まっていた。
◇
「さて……本題に入ろうかしら?」
セレスがわざとらしく咳払いし、にやりと笑った。「エリスティア、最近レオン殿下と仲が良いんじゃない?」
「っ……!」
思わず声を失ったエリスティア。湯上がりの頬がさらに赤く染まる。フローラが微笑みを添える。「私は嬉しかったわ。あなたが誰かに見守られている姿を、母のような気持ちで見ていたの」
「ふふ、娘が恋をするのを見るのは楽しいものね」セレスが頷き、アサヒも「年頃の子なら当然よ」と追い打ちをかける。エリスティアは布団を抱きしめ、「ち、違います……!」と慌てたが、心の奥で揺れているのは否定できなかった。胸の奥が熱く、鼓動が早まる。頭では整理できないのに、心だけが先に走り出していく。唇が震え、声にならない言葉を必死に探して――そして、思わず小さく、それでもはっきりと呟いた。「……好きになっちゃったかもしれません……」その瞬間、自分で口にした言葉にさらに頬が赤く染まり、視線を伏せずにはいられなかった。
◇
その流れで矛先はアマネへ。「じゃあアマネ、アルト殿下とは?」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って!」アマネは真っ赤になり、布団に顔をうずめる。アサヒが優しい目で「母親としては心配。でも女としては応援したい」と告げ、セレスが「義理の娘が二人増えるかも!」と冗談めかす。アマネは悲鳴を上げながら、顔を真っ赤に染めて転げ回った。
◇
「じゃあリュシアは?」
突然の矛先にリュシアは肩を震わせた。「わ、私……?」
「カイルよね?」フローラがあっさり断言する。リュシアの顔が一瞬で真っ赤に。「そ、そんなの……!」と必死に否定するが、セレスが「隠しても無駄よ。周りには筒抜けだから」と追撃し、彼女は枕を抱えて縮こまってしまった。
◇
最後に元気に構えたのはミナだった。「ふふん、私は大丈夫!」と胸を張る。だがアサヒがすかさず「ジークとはもう夫婦同然でしょ?」と放つ。「ぶっ……!?」ミナは頭を抱え、「ち、ちがうってば!」とジタバタする。セレスとフローラが声を揃えて笑い、部屋はさらに温かく賑やかになった。
◇
やがて笑いが落ち着いた頃、フローラがしっとりと声を落とした。「……でもね、今は魔王が出現し、人類が試される時代。だからこそ――」
アサヒが頷き、言葉を継ぐ。「だからこそ、人らしく生きてほしい。戦いの中にあっても、恋をして、笑って、涙を流して。それがあなたたちを支える力になるから」
セレスも穏やかに微笑む。「そうよ。あなたたちの笑顔が未来を照らす。だから胸を張っていいの」
◇
少女たちは赤面しながらも、どこか誇らしげに笑った。大人たちの言葉は重く、温かく、心に深く染み込んでいく。焚き火のようなぬくもりが部屋を満たし、夜は更けていった。
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