精霊談笑
庵の広間には、穏やかな焚き火の明かりが揺れていた。さきほどまで張り詰めていた精霊の儀の空気は和らぎ、仲間たちは丸く囲むように腰を下ろしている。炎がはぜる音と共に、ようやく緊張が解けた安堵の笑みが漏れ始めた。
「……いやぁ、驚いたよね。二体同時に精霊を迎え入れるなんて」
アルトが口を開くと、視線は自然とアマネへ向かう。
アマネは少し照れたように肩をすくめた。「自分でもびっくりしたんだよ。でも、あの瞬間……拒めなかった。きっと必要なんだって」
「さすがアマネ!」とミナが元気よく叫ぶ。ジークも「ほんとだな。お前はやっぱり勇者だ」と豪快に笑った。リュシアも穏やかな笑みで「アマネだからこそだと思う」と静かに言葉を添える。
◇
「にしても……」ジークが腕を組んでリュシアを見る。「リュシア、お前の精霊も相当だろ。全属性って、ほとんど無敵じゃねぇか?」
「ほんとだよ! 月の精霊まで加わるなんて、ずるいくらい万能!」ミナが大げさに驚いてみせる。
皆の声に、リュシアは小さく肩をすくめて苦笑した。「万能に見えるけど、その分背負うものも大きいの。でも……大丈夫。皆がいるから」
その言葉に、カイルが頷きながら「リュシアなら、必ずやり遂げられます」と真剣に応じる。仲間の眼差しが、彼女を支えていた。
◇
ミナは、膝の上に置いた魔導銃を撫でながら笑った。「私のロゴスはね……すっごくおしゃべり! 頭の中で次々に知識を投げてくるんだよ」
「お前にぴったりだな」ジークが吹き出すように笑う。「俺のイグ・ヴァナルは逆に荒っぽくてな。『もっと燃やせ!』って騒いでばかりだ。……まあ、俺に似てるんだろうな」
場が一気に笑いに包まれた。
◇
「僕のヴァルディアは静かで、寄り添ってくれる感じかな」カイルが語る。「でも、風の精霊ヴェントは……お節介で。怪我するとすぐに騒ぐんだ」
「ふふ、それはいいことじゃない?」とエリスティアが微笑む。「……私も、神樹そのものと契約したなんて、まだ信じられないけれど」
彼女の言葉に、ミナが即座に「似合ってるよ、エリスティア! 神樹の姫って呼ばれるの、すっごくいい!」と声を弾ませた。リュシアも「ええ、もう十分に姫らしいわ」と優しく言う。
エリスティアは顔を赤らめながらも、嬉しそうに小さく頷いた。
◇
その様子を見守っていたルシアンが、口元に笑みを浮かべて言葉を紡いだ。「お前たちが選ばれた精霊も、神樹も……すべて、この時代に必要な存在だ。だから胸を張れ」
「ルシアンさん……」とアルトが深く頷き、皆の胸にも静かな誇りが芽生えていく。
最後にミナがぱんっと手を叩いた。「これで私たち、もう最強パーティだね!」
「ははっ、言うじゃねえか!」ジークが豪快に笑い、アルトとアマネも顔を見合わせて笑う。リュシアは微笑みを浮かべ、カイルとエリスティアも小さく笑った。
焚き火の炎が優しく揺れ、庵の夜は笑い声と共に更けていった。
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