ジークの精霊の儀
神樹の芽が再び光を放った。今度は赤々とした炎のように燃え立ち、その熱気が庵の空気を震わせる。その光は迷いなくジークの胸へと注がれた。
「……はっ、ついに俺の番か」
ジークは口元を吊り上げ、轟斧を肩に担ぎ上げた。刃が赤く染まり、熱を帯びて唸りをあげる。仲間たちは緊張と期待の入り混じった視線で彼を見つめた。
◇
意識が熱の奔流に飲まれる。次に目を開けたとき、ジークは灼熱の荒野に立っていた。大地は裂け、マグマが噴き上がり、天空には火柱のような炎が渦を巻いていた。
その中心に、巨大な炎の塊が立ち上がる。獣の咆哮のように唸る声が辺りを揺るがした。
――力を求める者よ。お前はただ破壊を欲するのか。
ジークは鼻で笑い、斧を振り上げる。
「破壊? ああ、確かに俺は壊すのは得意だ。でもな――ただ壊すんじゃねぇ。俺は道を切り拓くために、立ちはだかるものを打ち砕く!」
言葉に呼応するように、轟斧が灼熱の炎を纏った。火柱が一斉に噴き上がり、炎の塊は雄々しく形を変えていく。猛り狂う獅子のような炎の化身が、ジークを試すように睨んだ。
――ならば、名を与えよ。我はお前の猛火、その力を共に振るおう。
ジークは口角を上げ、力強く叫んだ。
「俺が呼ぶ名は――『イグ・ヴァナル』! 荒々しい炎の精霊、俺の斧と共に燃えろ!」
その瞬間、炎の獅子は咆哮を轟かせ、全ての火が斧へと流れ込む。轟斧が燃え盛り、赤熱した刃が荒々しい鼓動を刻んだ。熱は恐怖ではなく、仲間を護る力としてジークの体に染み渡る。
◇
現実に戻ると、ジークの背に炎を纏った獅子の幻影が浮かび上がっていた。その熱気に仲間たちは思わず息を呑む。
「ジーク……」アマネが瞳を見開く。
リュシアは微笑みながら頷いた。「力強い炎……でも、仲間を照らす温かさも感じるわ」
ミナは目を輝かせ、「わぁっ! 本当に炎の獅子だ!」と歓声を上げた。
カイルは感心したように言った。「荒々しいけど、頼もしさを感じるね」
エリスティアも穏やかに微笑む。「まさに炎の守り神……あなたらしいです」
ジークは豪快に笑い、燃え盛る斧を軽々と担ぎ直した。
「これでいい。俺は俺らしく、斧と炎で道を切り拓く! 仲間のためにな!」
庵に響く笑い声と共に、赤熱した光が仲間たちの心を奮い立たせた。新たな契約は確かに結ばれ、炎は未来を照らす灯火となった。
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